次世代型シーケンサーの登場によって、過去10数年で腸内細菌の研究が飛躍的に進んでいます。その中で、腸内細菌と自閉症(以下ASD)の関係の詳細が報告されてから早10年以上が経過します。ここでは、自閉症に関連する腸内細菌の1つであるデスルフォフォビブリオ属(Desulfovibrio)について記載します。
デスルフォビブリオ属
硫化水素を産生する
「デスルフォビブリオ属」というのは、「シュードモナドータ門」に分類される細菌です。普段は海底や表土の奥など、泥の中で有機物の分解の役割を果たしています。硫酸塩還元菌と呼ばれるグループの1つでもあり、自然界になくてはならない存在ですが、分解の過程で猛毒の硫化水素を産生します。
この「デスルフォビブリオ属」が、どういうわけか腸内から検出されることがあります。ASDの児童の腸内では「デスルフォビブリオ属」が増加している事が複数の研究で報告されており、またForemaにある腸内細菌データでもそういう事例が複数見られます。
炎症性腸疾患(IBD)にも関与
「デスルフォビブリオ属」は、自閉症のみならず、IBDでも増加している事例が知られています。「デスルフォビブリオ属」の産生する硫化水素は遺伝子毒性のある猛毒であるため、消化器トラブルに至るのは分かりやすい背景です。また、幼少期であれば神経発達に悪影響を及ぼすであろうこともある程度想像がつきます。
問題は、なぜそんなものが腸内から検出されるのか? という点です。
どこからやってきたのか?
デスルフォビブリオ属は、本来は無酸素環境でのみ生息しますが、当然ながらごく微量にはその辺に存在しており、普段の生活の中で私たちの体内を出入りしているはずです。
事実、腸内全体の0.01%以下という数値で見れば、多くの個体から比較的頻繁に検出されます。つまり存在そのものは問題ではありません。それらが、何らかの事情(※)によって腸内で一定の勢力を得て、それを維持し続けてしまうことが大きな問題です。
何らかの事情としてしばしば指摘されるのが抗生物質です。
※母体から引き継いだ可能性もあり。自閉症やADHDが遺伝しやすいのは、DNAの問題の他に細菌の授受も影響している可能性があります。
抗生物質とデスルフォビブリオ属
抗生物質は、簡単にいえば微生物を殺菌するお薬です。抗生物質の投薬によって腸内細菌たちの勢力図は一時的に撹乱され、やがて時間をかけて回復していきます。ところが、実際にはうまく回復できず、おかしなバランスに至る事例が少なくありません。(投薬回数が多いほど正常な回復が難しくなっていく)
1950年代以降、抗生物質の使用は増え続け、結果として様々な自己免疫疾患の増加を真似ている可能性は様々な学術論文で指摘されるところですが、そうした背景による異変の1パターンとして「デスルフォビブリオ属」の過剰な増加があると考えられます。
関連商品:犬と猫の腸内フローラ検査「byOm」
神経の発達に影響するか
神経発達の重要な時期である幼少期に、腸内で硫化水素が多く産生されることは決してポジティブな要因ではありません。そうした状況の中のいくつかで、(遺伝や外部環境も重なり)ASDとして診断をうける不具合が発現するのだと考えられます。
ASDではなく発達障害(ADHD)や、その傾向がある人の腸内においても「デスルフォビブリオ属」が多めに検出される事例はしばしば見られ、また気難しい人の腸内でも同様の傾向が見られることがあります。
さらには、同じ「シュードモナドータ門」に分類される「サテレラ属」など、やはり自閉症との関連が報告される別の細菌たちも含めて検出が増加するパターンもあり、要因は複合的になりますが、どうであっても腸内細菌の影響が大きいのは間違いないでしょう。
デスルフォビブリオ属の抑制で症状の軽減は可能か
デスルフォビブリオ属がASDと関連しているのであれば、これらの抑制で症状の軽減や回復は可能なのでしょうか?
幼少期であれば、おそらくはYesです。
「デスルフォビブリオ属」は一部のプレバイオティクスで抑制の報告があります。Foremaでの実例においても、複数種のプレバイオティクスで抑制された事例が多くあります。
2歳や3歳で自閉症の可能性が指摘された時、経過を観察するのではなく、速やかに腸内細菌を調べ、なすべき対処をすれば将来は大きく変わっていく可能性があります。
関連商品:自閉症のお子様用の腸内細菌解析「byOm Kids(バイオームキッズ)」







