ピロリ菌と仲間たちの話

ピロリ菌と仲間たちの話

人だけに感染する??

ピロリ菌は、人間の胃袋だけに感染するものというのが通説です。

ところが、日々多数の腸内細菌を解析していると、犬や猫の腸内からもごくまれに微量の検出があります。これは犬や猫の胃にピロリ菌が存在している可能性を示唆しています。

犬や猫の腸内からピロリ菌が検出されている場合、おそらくは飼い主さん経由で入り込んだと見るのが妥当ですが、それが健康面にどう影響するのかは現時点では定かではありません。

そしてここには逆のパターンも存在します。

複数のヘリコバクター属

ピロリ菌は、ヘリコバクター属のピロリ種(Helicobacter pylori)の事ですが、近縁種で、犬から検出されるカニス種(Helicobacter canis)が存在します(以下、H.カニス)。

カニスというのは、「犬の」という意味で、文字通り犬のヘリコバクターということ。犬のみならず、猫や鹿などからも検出があります。そして、H.カニスは人間からも時々検出されます。胃がんとの関連は報告されていませんが、菌血症の報告が複数存在します。※菌血症: 血液から細菌が検出される症状

H.カニス以外に犬や猫から検出されるものとしては、ムステラエ種(Helicobacter mustelae)があります(以下、H.ムステラエ)。H.ムステラエはH.カニス同様に、時々人間からも検出されます。

これら以外にも、ヘリコバクター属の細菌は他にもいくつか存在し、多くは人獣共通で検出されます。

ここから分かるのは、人間や動物は微生物たちを広く共有しているという事実です。

ピロリ菌のリスク

話をピロリ菌に戻します。

ピロリ菌は人間では胃がんの原因とされていますが、実際には大きく4タイプが存在し、そのうち胃がんリスクを高めるのは1タイプのみという報告があります。そしてピロリ菌の除菌は胃がん治療後の予後にマイナスという可能性を報告する研究も存在します。

また、幼少期においてはピロリ菌の存在がセリアック病や喘息のリスクを軽減するという報告もあります。

ピロリ菌に対しての認識は、その一部を改める時期に来ているのかもしれません。

除菌とその後

人間でピロリ菌が検出されると、ほぼ除菌の一択となります。ところが、除菌を行なった人であっても、腸内細菌解析では微量にピロリ菌が検出される事例があります。除菌失敗といえばそれまでですが、例えば0.005%程度の検出が、果たして胃がんリスクになるのかどうかは議論の余地がありそうです。

体内には深遠な微生物生態系が広がり、いまだ謎で満ちています。こうした中、特定の細菌種をピンポイントで根絶するのは不可能で、そしてそれこそが健全な状態なのかもしれません。

※完全な根絶を追求すると、その負担は周辺にもおよぶ可能性大

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