猫に乳酸菌は必要か? 効果や選び方、デメリットを腸内細菌データで解説
(最終更新日: )猫用の乳酸菌サプリや乳酸菌入りフードが増えています。一方で「完全肉食の猫に乳酸菌は必要なのか」「デメリットはないの」と迷う飼い主さんも多いはずです。
ここでは、猫の腸内細菌を1,000頭以上解析してきたForema Laboのデータをもとに、猫と乳酸菌の関係、効果、選び方、与え方、そして注意すべきデメリットを解説します。
そもそも猫に乳酸菌は必要か?

猫の腸内にも乳酸菌は元からいる
猫は完全肉食性ですが、腸内には複数種の乳酸菌が常在菌として生息しています。食性と腸内細菌の構成はかなり関連しますが、猫にとって乳酸菌は「外から来た異物」ではありません。
大量に保有しているわけではない
猫に限った事ではないのですが、たいていの場合、乳酸菌は腸内では少数あであり、大量に保有しているわけではありません。一方で、大半の腸内細菌が大腸に生息するのに対し、乳酸菌群は小腸に生息します。その意味では単純に量を比較するのは正確ではないかもしれません。
猫に乳酸菌を与える効果
乳酸菌は腸内で乳酸などの有機酸をつくり、腸内環境を弱酸性に保つ働きがあります。これは抗菌活性につながるほか、腸内細菌のバランス維持や便通のサポートが期待されます。
また、腸は免疫細胞が集まる器官でもあり、乳酸菌と免疫の関係は世界中で研究が進んでいます(例:制御性T細胞の発現を促し炎症を抑制するなど)。
ただし、乳酸菌は、1000種類前後はいるとされている腸内細菌の中のごく一部の存在です。乳酸菌が全てを解決する最終兵器、というわけではない旨、よく理解しておく必要があります。
猫の乳酸菌サプリの選び方
1. 生菌か死菌か
生菌は生きたまま腸に届くことを狙ったもの。死菌(殺菌済み)は菌体成分が腸内細菌のエサや免疫への刺激として働くことを狙ったものです。
腸内の構成を立て直したい場合は生菌、日常のケアなら死菌入りのフードやおやつでも用途を満たせます。乳酸菌入りのキャットフードは製造時に加熱されていることが多く、基本的に死菌です。 ※ごく一部の芽胞形成菌(通称,有胞子性乳酸菌)のみ例外
2. 菌の種類が複数入っているか
腸内細菌は「群」として機能します。単一の菌種より、複数の菌種を組み合わせた製品の方が、個体差に対応しやすいと考えています。
3.プレバイオティクスが入っているか
乳酸菌は単体で使用するより、エサになるオリゴ糖などを併用する事で、腸内で活躍が大きく変わってきます。特にシニア猫は腸内細菌の多様性が下がっていることが多く、プレバイオティクスとの併用は重要です。
4. 「猫専用の乳酸菌」という表示だけで選ばない
「猫には猫の乳酸菌」「猫には腸球菌」というコピーをよく見かけますが、科学的な根拠は限定的です(後述)。表示より、菌種・生菌/死菌・配合成分を確認してください。
猫への乳酸菌の与え方
- 少量から始める:規定量の半分程度から始めると、導入初期の軟便が起こりにくくなります
- 毎日続ける:摂取した乳酸菌は腸内に定着しにくく、数日で排出されます。効果を見るなら継続が前提です
- フードに混ぜる:粉末タイプはウェットフードや少量のスープに混ぜると与えやすくなります。熱いものに混ぜると生菌が死滅するため、人肌以下の温度で
- 2週間ほど様子を見る:便の状態に変化がなければ、乳酸菌以外の原因を疑う段階です
猫に乳酸菌のデメリットについて

結論:猫への乳酸菌は基本的にデメリット無し
例外を除き、デメリットはありません
結論から書くと、猫がサプリなどで乳酸菌を摂取することは、(サプリがまっとうなものである限り)特に問題はありません。猫の腸内には常在菌として、複数種の乳酸菌たちが生息しています。サプリによって乳酸菌の種類や濃度は異なりますが、一般的な乳酸菌種の摂取で猫の腸内環境がダメージを受けるようなことはありません。(あるとすれば潜在的な不具合が考えられます)
導入初期には注意が必要
ただし、初めて乳酸菌製品を取り入れる場合などでは、おかなが緩くなったり、下痢をする事例があります。これは腸内環境が急に変動したことによる一時的は反応(異物として判断されたなど)と考えられますが、通常は2,3回目で落ち着きます。
もしも落ち着かない場合、腸内に異変が起きている可能性があります。それは乳酸菌のデメリットというよりも、何らかの要因で潜在的にリスクを保有してるというのが実情と言えます。
関連記事:犬のIBD ステロイドが効かない時に起きていること
過剰な乳酸菌はマイナスの可能性も
焦って与えすぎない
乳酸菌に限ったことではありませんが、過剰摂取は望ましいものではありません。度を越せば腸内環境に悪影響を与える可能性は否定できません。特に導入初期に期待して多くあげすぎる事例は多々みられるため、焦らない事は重要です。
乳酸菌では解決できない問題もある
たとえば消化器トラブルにおいて、乳酸菌は万能なように思われがちですが、現実としては乳酸菌とは無関係のところで起きている消化器トラブルは多々あります。
こういう場合に乳酸菌を摂取しても改善がありません。にも関わらず量を増やし続けたり、「乳酸菌を摂っているから大丈夫」と、選択肢が見えなくなっている事例がしばしば見られます。
関連記事: 猫のibd ステロイドが効かない時..
乳酸菌がリスクになる場合

乳酸菌の過剰増加
一部の自己免疫疾患(希少事例)
IBDや、一部の自己免疫疾患の猫の腸内で、代表的な乳酸菌グループである「(旧)ラクトバチルス属」の一部が過剰増殖している事例(※)がごく稀に見られます。そういう場合の検出量は少なくても一般的な個体の10倍超、ひどい時には50~100倍ほどの検出比率を示す事例すらあります。
※たとえばL.サリバリウスはプロバイオティクスとして有用な側面がある一方で、株によっては感染症の原因にもなりやすいという別の顔があります。
乳酸菌の過剰増加に対してサプリはリスク?
上述のような過剰増加の状況に対し、「とりあえず乳酸菌..」という選択はリスク要因と考えられますが、一方でこうした極端な突出は元々の腸内環境が機能不全に陥っている可能性を窺わせます。つまり乳酸菌の過剰増加な増加は不具合の原因というより、あくまで結果と捉えることができます。(これは腸内細菌解析を実施しない限り見えません)
尚、こうした状況に対し、特定の乳酸菌たちが抑制に貢献するという研究論文もあり、ここは奥深く敏感な領域です。
関連記事:犬と猫のIBD - ステロイドが効かない時に腸内では何が起きているのか?
ビフィズス菌の過剰増加
乳酸菌とは、乳酸を一定量生み出す細菌たちの総称です。乳酸菌と呼ばれる細菌たちの中に「一部のビフィズス菌(※)」も含まれています。
※ビフィズス菌とは、ビフィドバクテリウム属の細菌たちの総称です。
通常、犬や猫の腸内から「ビフィズス菌」はわずかしか検出されませんが、まれに通常の数十倍の濃度で検出される個体がいます。多くの場合、下痢や嘔吐といったトラブルを抱えています。この状況に対してさらに乳酸菌を投入するのはリスク要因と言えます。
尚、このパターンにおいては「IBD疑い」として診断されていることが多く、「とりあえず乳酸菌..」という選択に至っている事例がしばしば見られます。
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「猫には猫の乳酸菌」は正しくない?
英語の文献ではほとんど言及されていない
「猫には猫にあった乳酸菌」、「猫には腸球菌(※)が大事」といった論が根強いです。ところが、世界的な文献を見渡してもそのように言及しているものはごく一部に限られています。Foremaが保有する猫の膨大な腸内細菌データにおいても、「猫には腸球菌が多い」という事実はありません。
※腸球菌: エンテロコッカス属細菌の一般的な総称。サプリの文脈ではフェカリス菌/フェシウム菌を指すことが多い。
なぜ誤認が起きているか?
「猫には猫にあった乳酸菌」、「猫には腸球菌が大事」という論の根拠は、おそらくは2017年の東京大学の論文です。この時の研究手法は、現在主流の微生物DNAの解析手法ではなく、旧来の培養法が主体となっている上、リアルタイムPCRが採用されている点も大きな問題です(腸内細菌叢の解析には不向き)。
今ほど研究が進んでいない時期の論文のため、機器や予算に大きな制約があったのだと考えられますが、7,8年経過した今も当時の情報が根強く残っている点は大きな問題です。
尚、この時の研究にはフェシウム菌のサプリメーカーがお金を出しているという背景も重要です(※)。
※企業が研究費を出すこと自体は全く問題がありませんが、背景を知っておくと違うものが見えてくる場合があります。
関連記事:「猫には腸球菌」は本当か?
事実誤認で現実を見誤る
選択肢は乳酸菌だけではない
先にも少し触れましたが、多数選択肢がある中で盲信的に乳酸菌を選択してしまい、他の選択肢が見えなくなるような事例がしばしば見られます。乳酸菌は研究が進んでいるために知名度が浸透していますが、現実としては多くの腸内細菌たちの中の、ごく一部に過ぎません。
微生物群系として捉える
腸内環境の健全性を維持しているのは、多数を占める有名無名の常在菌たちであることが多く、むしろこれらのバランス崩壊こそが深刻な事態を招きます。
数百種類の微生物群の中に乳酸菌という1つの大きなグループが存在し、さまざまな役割を果たしています。
乳酸菌を無条件に信奉しすぎること。それこそが乳酸菌のデメリット(リスク)だと言えます。
よくある質問
猫は完全肉食性なのに、乳酸菌を摂る意味があるのですか?
あります。食性と腸内の常在細菌の構成は別の話で、猫の腸内にも複数種の乳酸菌が元から生息しています。不具合の起きている猫の腸内では乳酸菌群が減少している事例もしばしば見られ、対処としての乳酸菌摂取が有益となった事例は多くあります。ただし、その個体にとって本当に乳酸菌が必要かどうかは、腸内細菌を調べることで初めて分かるという点は重要です。
与え始めて軟便になりました。減らして続けるべきですか、やめるべきですか?
まず量を減らして続ける形が基本です。導入初期の一時的な変動であれば、2〜3回目で落ち着くことが多く、規定量の半分程度から始めると起こりにくくなります。ただし1週間以上続く場合や、下痢が悪化する場合は中止して様子を見てください。落ち着かない場合は製品との相性ではなく、腸内側に別の問題がある可能性を考える段階になります。
子猫やシニア猫にも与えてよいですか?
どちらも問題ありません。ただし子猫は腸内の構成が形成される途中にあり、変化への反応が出やすいため、少量から始めてください。シニアでは常在細菌の多様性が低下していることが多く、プレバイオティクスを併用したほうが定着しやすい傾向があります。持病がある場合や投薬中の場合は、開始前に担当獣医師に相談してください。
乳酸菌入りのキャットフードを食べていれば、サプリは不要ですか?
用途が異なります。フードに配合された乳酸菌は製造時の加熱を経ている場合が多く、ごく一部の例外をのぞいて生菌摂取にはなりません。日常の整腸用途としては意味がありますが、構成が崩れた状態を立て直す趣旨では力不足です。すでに腸内環境が安定している個体であれば、フードだけで十分な場合もあります。
「猫には猫の乳酸菌」「猫には腸球菌」と書かれた製品は避けるべきですか?
避ける必要はありませんが、それらはあくまでキャッチコピーです。その表示を選ぶ根拠にはしないでください。当ラボが保有する猫の解析データ(1000頭以上)では、猫の腸内は腸球菌が優勢という傾向はほぼありません。

Forema Labo チーム
腸内細菌や、環境中の微生物群集の解析~研究を行っています。Forema ラボでの数千件の解析データを元に、犬猫の腸内細菌と健康の関係、腸内環境と全身の健康との関係、そして自然界や生態系の話を発信しています。
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