犬と猫のIBD - ステロイドが効かない時に腸内では何が起きているのか?

犬と猫のIBD - ステロイドが効かない時に腸内では何が起きているのか?

人間のみならず、近年では犬や猫のIBDが増えています。

ここでは腸内細菌解析の現場の視点から、犬と猫のIBD、そしてステロイドが効かなくなる背景について記載します。

IBDの治療とステロイド

IBDって何だろう?

IBDは炎症性腸疾患の事で、人間の場合はほぼ「クローン病」と「潰瘍性大腸炎」を指します。「潰瘍性大腸炎」は故安部首相が患っていた事でも知られる、国の指定難病の1つです。

主には欧米人で加速度的に増加しているIBDが、近年ペット犬や猫の間でも増加しています。

IBDの原因と治療方法は?

IBDは炎症による疾患のため、まずは炎症を鎮めるお薬であるステロイドが使用されます。ステロイドが炎症を抑制している間に回復してくれば、少しずつお薬の量を減らしていきます。

ステロイドだけでは対処ができない時は、抗生物質を使用する場合もあります。IBDには腸内細菌が関与する事例も多いため、抗生物質による打撃で改善する場合があるとされています。

ステロイド: プレドニゾロンなど

ステロイドが活躍し、やがて効かなくなる

ステロイド投薬によって、嘘のように状況が改善する事があります。

そこから少しずつお薬を減らしていければいいのですが、減薬がうまくいかず、長期間ステロイドに頼ってしまう場合も少なくありません。

そしてある日、ステロイドが効かない日がやってきます。

>>関連記事: 犬と猫の歯周病とIBDの話

ステロイドが効かない時、腸内では何が起きているのか?

腸内バランスの崩壊:ディスバイオシス

Foremaでは、ステロイドが効かなくなった犬や猫の腸内細菌解析データを多数保有しています。

この時、愛犬/愛猫の腸内では何が起きているのでしょうか?

実はIBD個体の腸内細菌パターンは複数存在します。が、どれにも共通しているのは、腸内細菌バランスが激しく崩壊しているという点です。この状況をディスバイオシスといいます。

>>関連記事:盲腸切除で大腸癌リスクが増加!?

投薬前より悪化している可能性

ステロイドが効かなくなった個体も同様に、腸内細菌のバランスが激しく崩壊しています。「引き続き崩壊している」という表現の方が正確でしょう。つまり投薬前から全く回復していません。

それどころか、さらに悪化した結果、お薬では抑えきれないところまで炎症が進んでしまったというのが実情です。

>>関連記事:犬と猫の腸内細菌,そして悪性腫瘍の話

どうしてそうなってしまったのか?

なぜ、ステロイドが効かなくなるほど状況が悪化してしまうのでしょうか?

以下に考えられる要因を記載します。

治ったと誤認してしまう

これまで多数の腸内細菌解析を実施してきた中で見えてきたのは、多くの飼い主さんが(多かれ少なかれ)ステロイドを治療薬と間違えている、もしくはステロイド投与で治ったと誤認しているという点でした。

ステロイドで時間稼ぎをしている間に改善の施策を進めればよいのですが、治ったと誤認しているのであれば自然治癒以外に改善する道理はありません。

通常、IBDに至った根本の理由は自然には除去されないため、症状が消されている間に水面下で不具合が進行していったのだと考えられます。

>>関連記事:愛犬,愛猫のアルブミンが低下..その時何が??

抗生物質の後遺症

過去の抗生物質、もしくは直近の抗生物質の投薬によって腸内細菌の組成が大きく崩れてしまったような事例はとても多く見られます。

治すはずの投薬が、のちのリスクを増幅させた可能性があります。

こうした個体の腸内の特徴としては、C.ディフィシル(Clostridioides difficile)やレンサ球菌(Streptcoccus),エンテロバクター科(Enterobacteriaceae)など、薬剤耐性を持って増加しやすい細菌たちが極端に増加している点や、(投薬申告のある)抗生物質に対して感受性の高い細菌グループが枯渇している点などが挙げられます。

先天的な要因など

本当に深刻なのはおそらくこのパターンです。幼少の時点で、もしくは生まれながらにIBDが決まっていたような事例が多くあります。

通常はシニア期のディスバイオシスで見られるような激しい崩壊が、幼犬や1,2歳の個体で見られることがあります。

これらは飼い主さんに迎えられた時点で消化器トラブルを抱えていることが多く、マイナスからのスタートのような側面があります。そしてステロイドが効かなくなるタイミングが他より早い傾向があります。

先天的な要因とは何か?

ここでいう先天的な要因は、母体の問題と、生誕から間もない段階の要因に分けられます。後者は先天的という表現は妥当ではありませんが、飼い主さんのところに来た時点ですでに不具合があるという点で、(飼い主目線での擬似的な)先天的要因と表現しています。

繁殖犬の環境は過酷なようで、出産のたびに抗生物質が多量に使用されているのか、繁殖犬を引退した個体の腸内細菌組成は大変ひどいものです。

そして、そうした個体とそっくりな腸内細菌組成を持った幼犬の事例は頻繁に目にします。

母体の細菌組成はそのまま子にに引き継がれる事が分かっています。ブリーダーが何と言おうと、この現実は隠す事ができません。

>>関連記事: 犬と猫の腸内細菌解析「byOm(バイオーム)」リリース

参考資料:ステロイドについて

ステロイドとは何か?

ステロイドは、身体の機能を制御するために人間や動物が生成する化学物質です。例えばアドレナリンのようなストレスホルモンや、コルチゾールのような免疫系の反応を制御するホルモンなどです。ステロイドはまた、性ホルモン(エストロゲンやテストステロンなど)としても機能します。

ペット用のステロイド薬は通常、コルチコステロイドと呼ばれるもので、自然に体内で生産されるコルチゾールに似た作用を持つ薬物です。一般的にはアレルギー反応、皮膚の炎症、関節炎、自己免疫疾患、腫瘍などの治療に使用されます。

ステロイドの副作用

ステロイドは効果的な治療薬ではありますが、副作用がないわけではありません。主な副作用には以下のようなものがあります。

  • 食欲と体重への影響
  • 過度の喉の渇きと頻繁な尿
  • 肝臓への負担
  • 免疫の抑制(抵抗力の低下)
  • 運動能力の低下
  • メンタルへの影響(不機嫌やイライラなど)

長期的な使用や高い用量では、更なる健康問題(骨密度の低下、筋肉の減少など)が生じる可能性があります。

>>関連記事: 犬と猫の腸内細菌,そして悪性腫瘍の話

ブログに戻る

腸内細菌解析 一覧

1 4

腸内細菌ケアサプリ

腸内細菌から健康課題に取り組む、成分を厳選したオリジナルサプリです。愛犬/愛猫用の乳酸菌サプリ(プロバイオティクス)やオリゴ糖類を主軸としたプレバイオティクスサプリなど、自社ラボでの細菌研究に基づいた腸内ケアサプリをお届けします。

1 4