真菌類(しんきんるい)をご存知でしょうか?
真菌類とは、今話題の紅麹をはじめ、麹菌やカビ、酵母、キノコなどのグループです。
人間目線だと、カビも細菌も同じに見えますが、大きさは10倍~ほども違い、さらに生物としての構造は全く異なります
真菌と細菌
真菌類は人類側の存在?
真菌類は、分類上は私たち人間と同じ真核生物にあたり、一方の細菌類は原核生物です。系統樹のずっと上流で分岐しており、そもそもの根本が異なります。真菌類は、実は私たちに近い存在なのです。
そんな真菌類と細菌類は、共生関係を築くこともあれば、熾烈な競争を繰り広げている間柄でもあります。
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真菌類と細菌類の共生
地衣類という生き物
例えば、桜の表面を覆う地衣類は一見コケの仲間に見えますが、実は真菌類と光合成細菌らの共生体であり、さらにその周辺に深遠な微生物群系が構築されたいます。
味噌などの発酵食品
麹菌が活躍する味噌や醤油、日本酒にも、脇役ではありますが、一部の乳酸菌らが存在します。この時、乳酸菌らは重要な役割を果たす場合もあれば、劣化の要因になる場合もあります。先人らは、これら目に見えない「何かの力」を経験則でコントロールし続け、世界に誇る発酵大国を作り上げてきた太古からの営みがあります。
土壌での共生
有機農業などでも話題に上る菌根菌(きんこんきん)は真菌類ですが、根粒菌(こんりゅうきん)は細菌類です。両者の共生は健康な野菜、農薬に頼らなくても強靭に育つ農作物にとって不可欠です。
このように、真菌類と細菌類が共利共存をしている事例は多くあります。
真菌と細菌の戦い
抗生物質/抗菌薬
一方で、真菌類と細菌類が熾烈な争いを繰り広げているのも事実です。
例えば、世界で初めて開発された抗生物質のペニシリンは、青カビの一種がルーツです。青カビが細菌類による侵略を防ぐために作り出す化学物質、それがペニシリンの正体です。
ペニシリンの発見以後、さまざまな抗菌薬が開発されましたが、それらは全て真菌類/細菌類による天然の化学兵器を利用したものです。
発酵食品
もっと身近な抗争現場は発酵食品です。糠漬けやザワークラウトにカビが生えないのは、細菌たちが真菌類の侵略を防除しているためです。同時に、腐敗しないのは、乳酸菌らが、腐敗菌(シュードモナス属など)を防除しているためです。
このように、「真菌vs細菌」や「細菌vs細菌」の攻防は古来から果てしなく繰り広げられています。
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抗菌薬による殺菌
真菌や細菌らによる化学兵器を精製し、薬剤に仕上げた抗菌薬は、当然ながら真菌類/細菌類に対して絶大な効果を発揮します。
一方で、使い方を誤ると、体内の生態系全体に対して広く打撃を与えてしまうリスクがあります。
数百種の細菌たちによって構成された深遠な体内生態系は、一度崩れると再生するのが難しいという現実があります。
私たちは、目に見えない生態系の住人たちに対して、より深く注意を傾けるべきなのでしょう。