過去にも何度か触れたことがある、犬と猫の「ビフィズス菌」について、最新の知見を元に改めてお届けします。
犬と猫にビフィズス菌は本当に必要?
結論! そこまで重要ではない
犬や猫にとっては、「ビフィズス菌」はそこまで重要な存在ではありません。
人間の場合、「ビフィズス菌」の保有が腸内全体の1%を切るとかなり不健康な状況ですが、犬や猫の場合、「ビフィズス菌」を1%も保有している事例は稀です。
むしろ健康個体でもほとんど保有していないという事例は多くあります。
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ビフィズス菌は役に立たない?
では、「ビフィズス菌」は犬や猫には役に立たないのでしょうか?
これは難しい問いです。腸内を弱酸性に傾け、抗菌活性を発揮するという意味ではとても有益な"はず"です。
また、「ビフィズス菌」の中には一部で乳酸を生み出す種類も存在し、広い意味での乳酸菌に該当するものも存在します。(ヘテロ乳酸菌といいます)
では、実際に不具合のある個体の腸内ではどうなっているのでしょうか?
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ビフィズス菌が増えても人間ほどには改善しない事も..
腸内バランスが大きく崩れた個体や、消化器トラブルのある個体の腸内で、「ビフィズス菌」が頑張って勢力を維持している事例はしばしば見られます。
が、「ビフィズス菌」だけ増えても腸内環境は全く改善していない、といった事例が多く、その意味では大いに力不足の可能性があります。
人間の場合、「ビフィズス菌」の増加は腸内全体のメンバー構成に好影響を与えることが多いのですが、犬や猫の場合は必ずしもそうではないようです。
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ビフィズス菌をどう判断するか
主要な病原性細菌が指標
「ビフィズス菌」や「乳酸菌」が腸内で活躍しているかどうかは、「ウェルシュ菌」や「肺炎桿菌」といった主要な病原性細菌たちの増減を1つの指標と見ることができます。
犬や猫の場合、「乳酸菌群」の増加と「ウェルシュ菌」などの数は反比例することが大半ですが、「ビフィズス菌」だとそういう傾向は弱く、人間の場合ほど貢献していない事例が大半です。
元々そんなに保有していないものを、人間の目線と希望で与え続けるのは、(この場合はマイナスではないにしろ)そんなに恩恵は無いのだと考える事ができます。
増えすぎたビフィズス菌の例
最後に、犬や猫で「ビフィズス菌」が増えすぎる事例について。
「ビフィズス菌」が腸内で10%を超える犬や猫はとても珍しく、時に不穏です。20%を超えてくると不具合が表面化し、殆どの場合、消化器トラブルなど、何らかの問題を抱えています。
IBD(炎症性腸疾患)と診断された個体の腸内パターンの1つとして、「ビフィズス菌」が大増殖しているというタイプのものがあります。たとえ「ビフィズス菌」であっても、時に不具合や感染症の一因になるという事は知識として知っておいた方が良いでしょう。
「ビフィズス菌」に限らず、本来いるべき場所からはずれてしまった細菌は、新たな場所ではリスクとなります。