犬と猫のジアルジア、腸内細菌、そして抗生物質

犬と猫のジアルジア、腸内細菌、そして抗生物質

ジアルジア(原虫)の治療がきっかけで、愛犬/愛猫が長期的な不具合に至る事例があります。いったい何が起きているのでしょうか? 腸内細菌解析から見えてきた詳細を深掘りします。

治療がきっかけで不具合に至る?

ジアルジアとフラジール

犬や猫のジアルジアの治療は、一般的には抗生物質のフラジール(メトロニダゾール)が使用されます。主要な抗生物質が「細胞壁合成の阻害」や「タンパク質合成の阻害」といった働きをするのに対し、フラジールは「DNA鎖を切断」するという働きがあります。

フラジールは「嫌気性でグラム陰性」という性質の細菌たちや、ジアルジアのような原虫にもよく効くため、動物病院でも一般的に使用されることの多い抗生物質の1つです。

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常在菌たちにダメージを与える

フラジールはジアルジアだけでなく、腸内の主要な常在菌たちに広くダメージを与えます。

上述の「嫌気性グラム陰性細菌」というのは、病原性細菌や、いわゆる日和見菌と呼ばれるグループが多く含まれる一方で、正常な腸内環境の維持に不可欠なメンバーも見られます。

投薬によってジアルジアとともに主だった常在メンバーがダメージを受けた腸内は、時に正常に回復せず、全く別のバランス形成に至る場合があります。 結果としてアレルギー疾患や慢性の消化器トラブル、IBD(炎症性腸疾患)をはじめとした自己免疫疾患のリスクに直結するリスクがあります。

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フラジールには炎症抑制の働きがある

フラジールは炎症を抑制する働きがあるため、IBDなどの治療でも使用されます。具体的には「TNF-α」(ティーエヌエフアルファ)と呼ばれる炎症性サイトカインの産生を減らします。

「TNF-α」はクローン病などの要因となる側面もあり、産生を減らす事で炎症トラブル(下痢や痒みなど)が低減します。

一方で、上述のように常在菌にダメージを与えてしまいます。常在菌たちの中には「炎症を抑制する細菌たち」が存在します。それらが壊滅した結果、「フラジールをやめると炎症がひどくなる」というつらい状況に至る場合があります。

結果、投薬をやめられなくなってしまいます。

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TNF-αの抑制のデメリット

「TNF-α」というのは、本来は腫瘍の形成を防ぐ働きがあります(腫瘍壊死因子)。「TNF-α」の賛成を減らしてしまうと発癌リスクが増加する懸念があります。

事実、マウスやラットの実験では、フラジールの長期使用による発癌が報告されています。

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治る個体とダメージを受ける個体

犬と猫の腸内細菌

本来であれば回復する

ジアルジアの治療が不具合のきっかけになる事例はしばしば見られます。一方で大抵の個体は何事もなくジアルジアの駆除が成功し、そのまま健康な毎日を過ごします。

そうならない個体は何が異なっているのでしょうか?

おそらくは、「元々の腸内細菌組成に潜在的な弱さを抱えている」というのが実情です。

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抗生物質の投与と回復

抗生物質は、どんな個体であっても腸内細菌や全身の細菌たちに一定のダメージを与えます(そのためのお薬)。

腸内細菌の場合、通常であれば概ね1ヶ月ほどで元の状態、もしくはそれに近い状態まで回復します。

ところが投薬の回数が多かったり、長期に及んだ場合、回復がだんだん難しくなってしまいます。つまり累積の回数や投与量が影響します。

そして、累積は親や、その親の影響まで引き継いでしまう可能性が濃厚です。

母体や、さらにその母体に投薬があった場合、生まれてくる個体は生まれながらに2世代分の腸内細菌ダメージを負っているということです。

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親のダメージを引き継ぐ

腸内細菌が親のダメージを引き継ぐ点について、マウスやラットを使用した研究で複数報告があります。(マイクロバイオームの垂直伝播)

母体が保有する常在菌の一部に欠損があった場合、子はそれらの授受の機会を損失し、本来の腸内生態系の形成に難航してしまいます。派生して別の常在菌たちの欠損につながるかもしれません。

結果として消化器トラブルや感染症リスクを負いやすいなどのハンデを抱える可能性が懸念され、それに対してさらに投薬が行われると、状況はさらに悪化します。

事実、投薬履歴がないにも関わらず、投薬のあった個体と類似の腸内細菌組成をした個体の事例が多くみられます。(Forema ラボでの実例)

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どうすればいいか?

ジアルジアの治療がきっかけで不具合が表面化してしまった場合、それは治療そのものの問題ではなく、過去から蓄積した腸内ダメージの存在を示唆している可能性があります。

さらなる投薬で何とかするのではなく、腸内細菌の育成に注力するという選択肢も検討が必要と考えられます。

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