犬や猫の腸内細菌解析で見えてきたこと、それは抗生物質の使用が過剰になっているかもしれない、という事です。
腸内細菌の組成に痕跡が残る
抗生物質の使用は腸内細菌の組成に痕跡を残します。これは人間でもペットでも同様です。投薬回数が少なければ1ヶ月〜長くとも半年ほどで痕跡は見えなくなりますが、体調不良などのおりにその痕跡は再び大きくなる傾向があります。弊社での解析事例で判断する限りでは、投薬回数が多いほど痕跡は消えにくくなる傾向があります。
薬剤耐性菌の増加
ペットにも使用されることの多いペニシリン系の抗生物質アモキシシリンは、大腸菌/赤痢菌グループの薬剤耐性を強化し、時にそれらの過剰な増加につながっているようです。
また副作用の少ないとされているメトロニダゾールは重要な常在菌群を壊滅させ、結果としてさまざまなトラブル(IBDやアルブミン低下など)に影響する事例が頻繁に見られます。
次世代に引き継がれる
抗生物質が体内の生態系にダメージを与えることは、いまや常識となりつつあります。ところが、問題の本質は「ダメージが次の世代に引き継がれる」という点かもしれません。
妊娠中に抗生物質を使用すると、新生児の腸内細菌にも抗生物質の痕跡が見られる場合があります。人間の場合は、こうした初期の撹乱は生後1年ほどで正常に回復するようですが、重要な最初の1年を出遅れたことがその後にどう影響するのかは明確にはわかっていません。
が、いくつかの研究では、初期の腸内環境がアレルギーやアトピー性皮膚炎のリスクを左右する可能性が指摘されています。また、メンタルや肥満への影響を指摘する文献もあります。
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マウスの研究では..
母体が抗生物質を何度も投薬されている場合、それによってバランスが崩れた腸内環境はそのまま子に引き継がれます。当然ながら、失われた常在菌が戻ってくることはありません。
投薬でなくとも、例えば粗悪なフードや高脂肪食などの悪影響は子供に引き継がれます。妊娠〜授乳期間に高脂肪食だけを与え続けたマウスの研究では、親と子の腸内細菌バランスがそれぞれ大きく崩れ、かつ肥満が加速した事を報告しています。
さらに悪いことに、その後に普通の食事に戻しても、子マウスの肥満は継続してしまったと報告されています。 つまり、母体の腸内細菌ダメージは子に蓄積し、回復のチャンスを奪ってしまう可能性があります。
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犬や猫では初期不良が当たり前となっている?
ペットショップやブリーダーから受け入れた直後から不具合の出てしまう個体は、いまや日常的に見られます。Forema で腸内細菌を解析してきたそれらの実例においては、大半において腸内細菌のバランス崩壊が見られました。 中にはシニアの疾患個体と同じような組成をしたパピーの事例もあります。
これらは母体から負の遺産を引き継いだ可能性を強く示唆しています。
悪質なブリーダーが問題なのでしょうか?
おそらくはそうでしょう。ところが、評判の良いブリーダー出身の個体でも同様の事例は見られるため、日本のペット業界全体で起きている事と考えるのが自然です。
なぜそうなってしまうのか? この点を考える飼い主さんが増える事が、課題解決において不可欠です。
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