近年増加し続けている発達障害。「昔からあった..」というのも1つの真理ではありますが、それとは別の要因として化学物質が関与している可能性も多数報告されています。
ここではいくつかの要因について触れていきます。
農薬の影響
今月号のForema Press でも言及している殺虫剤のネオニコチノイドは、昆虫だけではなく、人間など哺乳類の脳の受容体にも結合し、神経毒の作用があります。人体実験ができない領域のため明快な結論が出ていませんが、理屈上は脳の神経活動に悪影響を与える可能性が多方面から指摘されています(マウスや鳥類では神経疾患/生殖障害の報告あり)
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喫煙の影響
16,440人のスウェーデン人の子供を20年追跡した研究(2024)では、妊娠中の喫煙や鎮痛剤の使用、またその後の両親の喫煙が子供のADHD(注意欠陥多動性障害)やASD(自閉症),知的障害の増加に影響していることが報告されています。(ニコチンとネオニコチノイドは類似の作用あり)
※ペット領域においては、ブリーダーが喫煙者かどうかは重要事項かもしれません
感染症治療~抗生物質の影響
上記の研究においては、出生〜5歳までの間の感染症がADHD,ASDなどのリスク上昇に影響していることも報告されています。ペニシリンなどの抗生物質の使用量や、抗生物質を必要とする感染症の感染数がリスクと相関していることから、抗生物質の影響が示唆されます。(1万人以上データの振り返り研究のため、実際に抗生物質が使用されたかどうかは確認できない場合も多いようです)
腸内細菌の影響
腸内細菌は、宿主の脳や神経回路に働きかける重要なポジションにあり、欠かせない機能の1つとして宿主と密接な関係にあります。腸内細菌のバランスが崩壊することで、ADHDをはじめとする神経疾患のリスクは向上する可能性が多数報告されています。
ADHDやASDの子供たちの腸内細菌を解析したデータは既に世界中で多数存在し、それぞれの疾患に特徴的なデータが報告されています。
腸内細菌が崩壊する要因としては、母体のストレスや炎症も関係している事がマウスの研究で複数報告されており、母体の健康がいかに重要かが改めて理解できます。
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まとめ
化学物質やストレス、抗生物質の過剰使用は身近なところにある問題ため、どう防ぐべきなのか頭をかかえてしまうところです。
現代社会において、決定打となるような解決策はおそらくは存在しません。1つずつ振り返り、除去できるものを1つずつ丁寧に取り除いていくしかありません。
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