動物病院で処方されるお薬、フラジール(メトロニダゾール)。ジアルジアの駆虫のみならず、下痢や炎症の抑制を用途として頻繁に登場します。フラジールは抗生物質であり、お薬なので当然ながら副作用があります。ところが、本当の問題についてはほとんど言及される事がありません。
副作用以外の問題がある
まずは一般的な副作用
フラジールの添付文書には、副作用として下記のような記載があります。(抜粋)
- 末梢神経障害(四肢のしびれなど)
- 中枢神経障害(ふらつき、歩行障害、意識障害、構語障害、etc..)
- 無菌性髄膜炎
- 中毒性表皮壊死融解症
- 急性膵炎
- 白血球減少、好中球減少
- 肝機能障害
これらは、動物病院や獣医師のブログなどでも記載されており、獣医さんたちが神経を尖らせている項目と言えるでしょう。ところが、問題の本質はここではない可能性があります。
関連記事:犬と猫のジアルジア、腸内細菌、そして抗生物質(フラジール)
腸内細菌群が壊滅する
フラジールの投薬が多い個体で頻繁に見られるのが、腸内細菌群の壊滅です(Forema ラボの解析データより)。
フラジールによる腸内細菌のダメージは特徴的であり、多くの場合で典型的なディスバイオシス、またはその手前の状況が見られます。
ディスバイオシスというのは、腸内細菌のバランスが崩壊した状況のことを指します。
関連記事:幼犬の原因不明の下痢..。深刻なヘルプサインかも?
ディスバイオシスは疾患に直結する
ディスバイオシスはIBD/慢性腸症をはじめ、様々な自己免疫疾患、アレルギー疾患、そして悪性腫瘍などの個体で見られます。これと同じ状況が、投薬によって再現されるというのはもっと認知されて良いはずです。(抗生物質とディスバイオシスについて言及した学術論文は大量に存在)
関連記事:盲腸切除で大腸癌リスクが増加?
副作用との最大の違い: 回復が難しい
フラジールによる腸内細菌群の壊滅は、回復に難航するという強い傾向があります。多くの副作用は、お薬をやめれば回復が見込めますが、腸内細菌のダメージは回復が難しく、投薬回数が重なる事で、元には戻らなくなります。
一般的に、抗生物質による腸内細菌のダメージは、は1ヶ月ほどで回復すると考えられてきました。ところが、投薬回数が増えると、半年以上前の投薬でも痕跡が残っている事は一般的であり、それらは今後も回復しないかもしれません。(Forema ラボの解析データでは、もっと厳しい実例が大量に存在します)
関連記事:ネットで抗生物質を買ってはいけない
その後どうなるか
下痢を治す事で下痢になる
フラジールを使用しすぎる事で、腸内細菌のバランスが崩壊に向かいます。崩壊の程度は、純粋に使用回数に比例すると考えて良いでしょう。
腸内細菌のバランスが崩れる事で
- 下痢や軟便
- 嘔吐
- かゆみ、皮膚トラブル
- 膵炎や肝炎など内臓のトラブル
- 腎臓の不具合
- 分離不安などメンタルの問題
- 食糞など行動の問題
- アルブミンの低下
などの不具合が表面化します。
バランスの悪化が進むについれ、これらの症状はひどくなり、それに対してさらに投薬するという厳しいスパイラルがしばしば展開されています。
結果、ディスバイオシスに至ります。ステロイドが効かなくなるのは多くの場合、このパターンです。
関連記事:犬のIBD.. ステロイドが効かない時に起きている事
抗菌薬反応性腸症
とは言え、フラジールなどの抗生物質を使用する事で難治性の下痢が一旦はおさまるという事象はあり、抗菌薬反応性腸症と呼ばれています。(慢性腸症の1つ)
やめると下痢が再発するため袋小路であり、理屈としては死ぬまで投薬が続きます。この時、腸内細菌のバランスは原型を留めておらず、「最大の免疫器官」としての大腸は、機能不全に近い状況と言えるかもしれません。
尚、仮に腸内細菌がゼロになったとしても、生存自体は可能です。研究用の「無菌マウス」というものも存在しており、生きる事に支障はありません(※)。ただし健全に生きる、正常に生きる、といった部分で難があり、特に微生物に常時晒されている日常環境において、腸内細菌群の働きが機能しないというのは致命的です。
※無菌マウスは死ぬまで無菌環境で飼育
関連記事:ステロイドが効かない..犬の蛋白漏出性腸症とアルブミンの低下
なぜ獣医さんは言及しないか
そもそも獣医学ではない
投薬による腸内細菌へのダメージや、ディスバイオシスと投薬による負の連鎖について言及する獣医さんは極めて稀です。これは純粋に、獣医学と微生物学/バイオインフォマティクスは別の分野という事が関係しているようです。(特に腸内細菌分野は2010年代に急速に発展した)
獣医学部で習っていないものは、当然ながら専門外となります。(人間の医療の多くの医師も同様)
これは医師側の問題ではなく、構造の問題と言えるのでしょう。
関連記事:猫には猫の乳酸菌(腸球菌)は本当か?
興味がない人もいる
若い獣医さんは、腸内細菌の問題について感度が高い傾向があります。東洋医学の領域を取り入れている獣医さんも同様です(女性が多い)。
一方で、年配になる程、従来の定説を変えない場合が多く、そもそも興味を示さない人、お薬が好きな先生もしばしば見られます。
正解は人それぞれですが、主治医の先生の方向性はある程度知っておいた方がよいのかもしれません。
関連記事:フェカリス菌って何? 犬と猫の乳酸菌の話








