犬・猫の腸内フローラ検査は「意味がない」のか?
(最終更新日: )過去に腸内フローラ検査を受けたけど、結局何なの? 意味あるの? と思った方もいるかもしれません。実際に腸内細菌の解析を行っている当事者の立場からお答えします。
いきなり結論
腸内フローラ検査は非常に重要です。ただし、過去には無意味に近いものも存在していました。
これまで主流であった、あなたは「⚪︎⚪︎点」です、といったものや⚪︎/△/× の3段階評価は実用性や根拠がなく、実質的にあまり意味のないものでした。そこから時代は流れ、知見が蓄積された結果、使い方によっては非常に有益な情報源となり得ます。
「意味がない」と感じる主な理由
1. 「善玉菌・悪玉菌」の二分法に根拠が薄い
善玉菌、悪玉菌という名称は分かりやすく、一般の人たちにとっても受け入れやすいものです。一方で、微生物の世界は善悪で二分できるものではありません。同じ細菌でも、宿主の状態や他の細菌との組み合わせで働きが変わります。例えば疾患で苦しんでいる状況にも関わらず、あなたは90点です、といった評価が下されると、検査自体の存在意義を疑ってしまいます。
2. 「正常値」が存在しない
腸内フローラの基準値、正常値は個体差が大きく、しかも歴史が浅いことから確立された基準値がありません。犬や猫においては、さらにデータが乏しい上に、人間以上に個体差があります。よって、検査結果の比較対象が曖昧で、結論が見えづらいという問題がありました。
3. オチがない
良くわからない細菌の名前を聞かされて、それで終わってしまうことが多く、それはオチがない話のようです。仕方ないので「あなたは⚪︎点です」といった結論が提示されることが大半でしたが、実態と乖離していたり、そもそも点数に何の意味があるのかという根本の問いが残ってしまいます。
こうしたことから、腸内フローラ検査は意味がない、と考える人が増えるのも仕方のないことかもしれません。実はForema においても、複数のスタッフが過去に同じ経験をしていました。
よって、自社でまともな腸内細菌の解析サービスを立ち上げる大きな動機となりました。
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腸内フローラは疾患と明らかに関係がある
発展途上の時期があった
私たちが、自社で腸内フローラの検査を立ち上げようと考えた理由は、腸内細菌と重要な疾患との間に深い関連があるということを認知していたからです。(2016年~2018年頃)
多くの論文を参照し、実際のデータ事例を確認し、既存の常識がリアルタイムで覆されていることを理解していました。
ところが、実際に世にある腸内フローラ検査を受けてみると、その内容はまだ矛盾が多く、単純化され、しかもオチが無いという辛いものでした。 (粗悪なのではなく、開拓〜発展途上の時期だった)
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実際にデータを分析した
当時まだ自社ラボが無かったことから、私たちは大学との共同研究を実施し、ビーグル犬たちの腸内細菌/食との関係についての深掘りを行いました。研究が終わったのちも、さまざまな検体を検査機関に送り、得られた難解なデータと、宿主の症状との関連付けに尽力しました。
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難解すぎるゆえに無意味に見える
腸内細菌データというのは、膨大な塩基配列の集合体であり、これに意味を持たせるのは非常に困難を伴うものです。
よって、一般の方に伝えるためには、ある程度単純化しなければならないという宿命があります。
Forema でも、ある程度単純化した結果を協力者たちに見せたところ、それでも「難解すぎる」とお叱りを受けました。さらに単純化し、一般の方にも提供したところ、「文字が多すぎる」とお叱りを受けました。
単純化すれば、「無意味で根拠が薄くオチも無い」となり、詳細を詰めれば「難しい」とそっぽを向かれる。これが「腸内フローラ検査は無意味」の背景にある本当の姿です。
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「原因不明」でも腸内に明快な問題

動物病院で原因が分からない
Forema に解析の依頼をされる方は、半数以上が闘病中の愛犬/愛猫の飼い主さんであり、動物病院で解決できなかった事から、「腸内フローラを調べてみよう」とご依頼に至っています。(ありがたい事に口コミや紹介が多くあります)
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例えばIBDや慢性腸症
特にペット犬で急増しているのが、IBDや慢性腸症で、原因不明の下痢が延々と続きます。食欲不振〜アルブミンの低下〜体重低下という負の流れが進行することも多く、飼い主さんの心を締め付けます。
これらは原因不明とされていますが、実際に腸内細菌を調べてみると、健康個体とは明らかに異なる顕著な特徴がほぼ例外なく見られます。(人間界では原因となる複数種の細菌グループが特定されています)
この時点で、「腸内フローラ検査は無意味」ではない、事がわかります。
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異変をどうすればいいか
人体実験を継続した
仮に腸内細菌のバランスに異変が見つかったとしても、ではどうすれば良いのか?という知見はこれまで蓄積されていませんでした。よって私たちは、主には健常者による人体実験で、どの細菌が何によって増減するのかの実データを日々蓄積していきました。薬品ではなく、食品や食用成分だけを対象として情報を集めていきました。
日本は恵まれた国であり、有益な成分を製造しているメーカーが研究内容を論文や広報資料として発表している事が多く、有望な成分にはすぐにアクセスする事ができました。
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改善事例が多く積み上がっていく
私たちが人体実験で積み上げた事例は、犬の健康個体でもすぐに再現が取れ、やがて疾患のある個体でも同様の事象が確認できました。
自社ラボで解析サービスを開始して以降は、解析した疾患の種類も大幅に増え、結果として取り扱う整腸成分も増えていきましたが、その頃には世界中で腸内細菌関連の論文が登場するようになっており、さらに多くの知見が蓄積していきました。
「腸内フローラ検査に意味があるか?」という問いはもはや愚問であり、「腸内フローラ検査は最重要事項」というのが私たちの明快な回答となります。
では、なぜ動物病院ではあまり扱っていないのでしょうか?
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構造にバグがある
私たちはこれまで多くの獣医さんと話をしてきました。
そこで頻繁に耳にするのが、
腸内フローラを調べることで「治療に何のメリットがあるのか?」「エビデンスは?」というものでした。この問いは、世界で研究が加速していた2015年頃に言われていたものであり、よって数多くの研究がなされ、膨大な量の論文が日々世に吐き出されています。
ところが、10年経っても同じこと問う人が非常に多いことに驚かされます。
理由を考えたところ、獣医さんらが忙しすぎて、論文を全く読めていないという構造上の問題が見えてきました(人間の医者も同じ傾向あり)
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獣医さんが忙しすぎる
獣医さんが忙しすぎるのは、原因不明の疾患が増えている事も要因の1つと言えます。上述のとおり、IBDなど難病の多くの部分に腸内細菌が関係していますが、忙しいので論文を読む時間がない。結果として治療が難航し忙しい..。
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投薬以外の選択肢として
私たちは、医療機関ではないため獣医療を行うことはできません。一方で、膨大な腸内細菌データ、疾患データから導いた知見があります。
それらを根拠に、抗生物質以外の選択肢、ステロイド以外の選択肢、療法食以外の選択肢、を提示しながら、ご依頼いただいた飼い主の方々に貢献しています。
「腸内フローラ検査には意味がないか?」と問われれば、「非常に重要な意味がある」と答えます。
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よくある質問
「善玉菌が少ない」と言われましたが、どうすればいいですか?
多くの場合、善玉菌は乳酸菌や酪酸菌を指します。一方で、最適値は個人や個体によって異なります。よって、まずは食事改善が重要ですが、その上で、できれば半年後を目安に再度検査を受けてみることをお勧めします。その差分をみることで初めてデータ全体が重要な意味を持ち始めます。一方で、善玉菌という言葉そのものが単純化の象徴のような側面があり、ミスリードの要素が少なくないと認識する事が重要です。
腸内フローラ検査は動物病院でも受ける事ができますか?
ごく一部の動物病院が、実施しています。Forema においても一部の熱心な獣医さんにご活用いただいています。
腸内フローラ検査は今後安くなりますか?
恐らくは、なりません。科学技術の更なる飛躍によって、解析内容もより高度化が進んでいます。むしろ現状が安すぎるため、今後の価格は上昇していくと予想されます。

Forema Labo チーム
腸内細菌や、環境中の微生物群集の解析~研究を行っています。Forema ラボでの数千件の解析データを元に、犬猫の腸内細菌と健康の関係、腸内環境と全身の健康との関係、そして自然界や生態系の話を発信しています。
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