梅雨といえば洗濯物の問題があります。そう、生乾きの雑巾臭です。あの匂いは一体どこからやってくるのでしょうか?今回は生乾きの悪臭と細菌についてお届けします。
悪臭の原因はこの細菌!?
モラクセラ属の細菌たち
洗濯物や雑巾の悪臭の原因は「雑菌」で片付けられますが、その原因となるのは主に「モラクセラ属(Moraxella)」だと突き止めた研究グループがあります。
「モラクセラ属」は、人や動物の口腔〜上気道に存在する常在菌で、まれに感染症の原因になりますが、宿主が健康である限りは無害な存在です。
「生乾き臭だけが問題」という、ある意味平和的な存在に見えます。
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「モラクセラ属」の別の顔
通常は無害の「モラクセラ属」は、時に暴走します。
口腔トラブルが深刻な犬や猫の口腔細菌を解析したところ、「モラクセラ属」が大幅に増加している事例がしばしば見られます。
当然ながら、口臭がキツくなっている事が大半です。
ところが話はこれで終わりません。
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モラクセラ属の脅威
粘膜部位の感染症
「モラクセラ属」の一種である「M.ボーボクリ(Moraxella bovoculi)」は、牛の伝染性結膜炎を引き起こします。
こう聞くと牛だけの病気と思ってしまいがちですが、犬や猫の口腔内で増えている事例は頻繁に見られます。
そういう時は「モラクセラ属」のみならず、人獣共通感染症の「パスツレラ属」や、髄膜炎菌の「ナイセリア属」、ペスト菌でも知られる「エルシニア属」が徒党を組んだように増加している事が少なくありません。
口腔トラブルというと歯周病ばかりが気になりますが、犬猫の場合、歯周病菌よりもこうした病原性細菌たちの事例の方が多いくらいです。
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そしてアルツハイマー..
アルツハイマー病患者の口腔で増えている細菌グループの1つとして「モラクセラ属」も報告されています。
これは「モラクセラ属」がアルツハイマーを引き起こすという意味ではありませんが、口腔内の治安悪化の1つの指標として、「モラクセラ属」の増加は危険信号と言えるのかもしれません。
私達は重篤な疾患に対し、絶対的な悪役を探してしまいがちですが、現実としては絶対悪のような事例は多くありません。全体の治安悪化の結果として、発症に至るというのが実情のようです。
余談ながら
アルツハイマーの原因として長年指摘されてきたのが「アミロイドβ」と呼ばれるタンパク質があります。ところが、「アミロイドβ」は原因ではなく、細菌たちを防除した結果として増えているのではないかという説があります(本来は抗菌物質)。