晩秋の柿の木には、毎夜のようにツキノワグマがやってきます。Forema と同じ集落内にある柿の木畑でツキノワグマ2頭分のフンを確保し、そこに含まれる微生物 DNAの解析を行ったところ、大量の乳酸菌群が検出されました。
ツキノワグマの腸内細菌
乳酸菌「ロイコノストック属」
ツキノワグマの検体から検出された乳酸菌種は30種以上で、中でも「ロイコノストック属」は2頭ともに他の細菌たちを圧倒していました。
「ロイコノストック属」というのは、チーズの発酵などにも使われる有用菌ですが、一方でフルーツを傷める原因菌としても知られています(自然界では果物などを分解する役割)。
「ロイコノストック属」がツキノワグマのフンから大量に検出されたのは、おそらくは熟した柿 (= 分解途中 )に大量に含まれていたという背景が考えられ、晩秋に大量に摂取された乳酸菌たちは冬眠前~冬眠中の腸内細菌組成にも何らかの影響を与えている可能性があります。
柿の実を調べたところ..
「ロイコノストック属」の出所を探るため、実際に柿の実を確保し、組織に含まれる微生物の培養を行ったところ..。予想通り「ロイコノストック属」の発見に至りました。それらはそのまま大型タンクでさらに培養し、フリーズドライ加工を施した後に冷凍庫で眠っています。
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柿が腸内に与える影響
熟した柿などに含まれる乳酸菌群が冬眠に与える影響については、詳しく明記した文献が見当たらない一方で、柿そのものが腸内環境に良い影響を与える事が分かり始めています。特に、渋 ( しぶ ) のタンニンは重要な成分です。
1. 肥満抑制の可能性
2018年に中国の華中農業大学で実施されたマウスの実験では、適量の柿タンニンは 2 週間ほどで腸内細菌の組成を変化させ、意図的に高コレステロールの餌を与えたマウス群においても肥満抑制を示唆する結果が得られています( バクテロイドータ門の増加とバシロータ門の減少 )。同時にビフィズス菌及び主要な乳酸菌グループの増加が見られ、大腸菌グループや腸球菌グループの減少が報告されています。
2. IBD 抑制の可能性
代表的な IBD( 炎症性腸疾患 ) である潰瘍性大腸炎においても、柿タンニンの有用性を報告する研究が あります。国内で行われたマウスの 実験(2021年,奈良県立医科大学)においては、柿タンニンが炎症に関連する遺伝子の発現を抑制した他、腸内細菌組成の改善や多様性の向上、そしてやはり大腸菌群や腸球菌の抑制が報告されています。
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自然界に由来する整腸の妙薬
柿に限らず、炎症抑制や抗酸化作用、抗菌作用が見られる果物 / 植物由来の成分はいくつも存在し、本来それらは特別なものではないことに気付かされます。自然界にある有用なものから離れすぎた結果として、さまざまな疾患の増加につながっている可能性は否定できません。
尚、後日談として、柿の葉も検証したものの、培養できるような細菌たちは見つける事ができませんでした。柿の葉寿司でも知られるように、天然の抗菌成分が乳酸菌を含む様々な細菌たちの増殖を妨げていたようです。