ドッグフード/キャットフードの数値は本当に重要?

ドッグフード/キャットフードの数値は本当に重要?

健康や食事を数値で管理しようと取り組む方は少なくありません。重要な取り組みです。一方で、数値に過敏になり、数値に追われているような事例もしばしば見られます。数値が目的になると、本質を見失う可能性があります。

数値は参考である

栄養学の本などで勉強し、必要な食材を吟味される方も多いでしょう。ところが食材はナマモノです。季節によって、産地によって、そして個々の違いによって、それぞれに数値はばらついています。これは、畑をやっている人なら感覚としてお分かり頂けるはずです。

食材ごとの栄養成分は文科省によってデータでまとめられていますが、あくまで標準的な参考数値と認識した方が良いでしょう。食材は工業製品ではありません。

>> 食品成分データベース

個体によって異なる

全く同じ栄養成分を摂取したとしても、年齢や体重、脂肪の過多は個体ごとに異なります。この現実を前に、皆を同じ数値で管理するのは無理があります。そして個体差は遺伝的なものもありますが、腸内細菌の差も大きく影響します。

食材を分解し、栄養素を生み出す仕事の多くが腸内細菌によって行われています。その食材を分解できる腸内細菌が少なければ、栄養摂取は不十分と考える事ができます。

また、同じカロリーの食材でも、腸内細菌によって取り出すエネルギーが異なる事が分かっています。例えば一部の古細菌は少量の食材から多くのエネルギーを取り出せるため、少食の人が多く保有している傾向があります(同時に肥満にも関連)。また越冬前の動物の一部では、腸内細菌の変化によってカロリーの摂取効率が高まるという報告もあります。

関連記事:犬の総合栄養食、その成分と役割について

AAFCOの栄養基準

犬と猫の栄養基準

国内のペットフードは、AAFCO(米国飼料検査官協会)の定めた栄養基準を満たす事が必須となっています(※総合栄養食の場合)。一方で、この基準値もアメリカ人が定めた数値にすぎません。例えばタンパク質の大半をトウモロコシで補ったとしても数値基準自体は満たせます。(原価も安くヘルシーに見えます)

>> AAFCO (wikipedia)

とうもろこし

では、犬や猫がトウモロコシ主体で生きていけるのでしょうか? 最低限の生存は可能かもしれません。ただし健康的に生きていけるかどうかはなかなか厳しそうです(特に猫)。腸内細菌レベルで見ると、トウモロコシや小麦のフードを主体にしている個体の腸内細菌は、健康個体とは異なる特徴的なパターンを示す強い傾向があります。

現代の医療では、発症していない場合は疾患とは捉えれないため、腸内細菌がおかしくとも異変が見えない限りは健康とされてしまいます。(そして、ある日突然発症したように見える)

関連記事: 犬と猫の胆泥症、その時腸内で何が?

数値が目的となってしまう

ペットフードの成分表示を見ると、「ビタミン類」や「ミネラル類」と書かれている事が多いです。これは、添加物としてビタミン、ミネラルを加えなければ数値基準が満たせないためです。上述の件と矛盾するようですが、AAFCOの数値基準はとても厳しく、微量栄養素においては添加物を入れないと満たすのが難しいという現実があります。

が、添加物を入れないと成り立たない数値基準とは一体なんなのでしょうか?

逆に、ビタミンやミネラルなどを後から添加しておけば、大抵のものは「基準を満たした総合栄養食」に仕立てる事が可能です。嗜好性のきわめて高いおやつが「総合栄養食」をうたっている点に疑問を持つことは重要です。

関連記事: 犬のIBD.. ステロイドが効かない時に起きている事

道を誤ったフードも多い

腸内細菌解析の現場において、特定のフードが特定の疾患に影響を及ぼしているであろう事例には頻繁に出会います。それらは、数値的には良さそうだったり、動物病院で販売されていたり、短期的にはメリットがあったり、などの背景があります。

数値とは所詮は数値です。重要な参考情報ではありますが、盲信すると道を誤ります。(中には、書いてある原材料表示では増えないはずの細菌たちが大きく増加する、おかしな輸入品フードもあります)

関連記事:乳酸菌の「合う」「合わない」の真相

Forema においても同様

鹿肉で作られた犬の総合栄養食 Forema Basis  

私たちもドライフードを販売していますが、ドライフードが最善の形態とは考えていません。その中で、せめてより良いものを、と考え、試行錯誤をし販売しています。 それであっても、可能な限りドライフードだけではなく、さまざまな食材(できればお肉そのもの)をトッピングし、また適切な食物繊維類を摂取することで不足を補って頂きたいと考えています。

「では、適切とはどのくらい?? 」

それは試行錯誤しかありません。ここで完璧な正解を求めている限り、数値の呪縛から抜け出すことはできません。

鹿肉の切落し(犬用/猫用) 犬用/猫用の鹿肉と猪肉
ブログに戻る