犬とは何が違う? 猫の腸内細菌の話

犬とは何が違う? 猫の腸内細菌の話

(最終更新日: )

愛犬、愛猫の腸内環境を気にする飼い主さんが増えています。一方で、犬と比べて猫の腸内環境はまだ研究が進んでいません。ここでは、犬との比較という視点で、猫の腸内細菌/腸内フローラについて記述します。(自社ラボでの解析実例をもとに記載しています)

犬と猫の腸内細菌は異なる

地域猫

犬は肉食寄りの雑食性,猫は完全肉食性

犬と猫の腸内細菌を比べると、(研究者目線であれば)違いは一目瞭然です。データを見ただけで犬か猫か、はたまた人間かは判別が可能です。

犬は食べられるものが多く、人間との共通する細菌の保有が目立ちます。例えばベジタリアンが多く保有する細菌グループは犬からも時々検出がありますが、猫からは検出がほぼありません。

一方で、猫は肉食動物が保有する細菌群をしっかり保有している他、犬が保有しない微量かつ雑多な細菌種を幅広く保有する傾向があります。

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猫の方が多様性が高い

たくさんの細菌種を保有

犬と比べて雑多な細菌群を豊富に保有する猫は、当然ながら腸内環境の多様性が高いという特徴があります。

多様性というのは、簡単にいえば「いろんな種類がたくさんいる」ということ。これは腸内環境の良し悪しを示す重要な指標です。

単純に考えると、「犬と比べて猫の方が健康なの?」と解釈できますが、事実そうかもしれません。

ヤマネコのDNA

犬は猫に比べても品種改良が過剰に進んでおり、遺伝要因のさまざまな課題が指摘されています。

一方で猫(イエネコ)は、いまなお原種であるアフリカのヤマネコと共通するDNAを多く保有しており、「その差は依然として小さなまま」とされています。

人間側になびかない、なんとも猫らしい特徴ですが、こうした遺伝的な要因は腸内環境にも影響すると考えられます。

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「猫には腸球菌」は、おそらくは誤報

商品のキャッチコピーでしばしば目にする「猫には腸球菌」という主張。実際に猫の腸内細菌の解析を続け、何百頭ものデータを確認しても、そうした事実はほぼ見られません。

「猫には腸球菌」の根拠となっている大元の論文はかなり過去のものであり、解析手法が古く、また論文の趣旨もそういう主張をしているものではないため、あくまで広告用のキャッチコピーとして定着しているだけと言えます。

関連記事:「猫には猫の乳酸菌」は本当か?

ペットフードが猫の腸内細菌を破壊する?

とうもろこし

小麦やトウモロコシが主原料

猫の主食がトウモロコシでいいわけがない

完全肉食性の猫が、とうもろこしや小麦が主原料のフードを食べる事で、さまざまな不都合が生じるリスクがあります。

現実として、消化器トラブルのある個体と、食べているフードを照らし合わせると、小麦やトウモロコシを主原料としている事例が多く、また腸内細菌の組成もフードの影響を強く示唆している事例が頻繁に見られます。

腸内細菌のデータに現れる

ここでは情報の一人歩きを防ぐため、具体的な細菌種やグループの明記は避けますが、トウモロコシや小麦を食べ続ける事で、本来猫が保有しない細菌群が腸内で勢力を伸ばします。

このパターンで不具合に至った場合、動物病院ではほぼ例外なく「原因不明」と診断されます。腸内細菌のデータを見れば一目瞭然なのですが、ここは獣医療の盲点となっているようです。

ダイエットフードは推奨できない

人間のダイエット目線で見てはいけない

近年、猫の室内飼いが徹底されてきたことで以前にも増して肥満や運動不足が猫たちの課題となっています。

当然、満腹感を感じやすいダイエットフードの需要が高まりますが、これらも本来の猫の食べ物とは大きく逸脱した成分で構成されています。

関連記事:猫の「食べない」の真相

逸脱こそがリスクの根本

腸内細菌のデータを見れば、その個体がダイエットフードを常用している事がわかるほどです。結果として、健康問題につながってしまった事例が多く存在しています。

猫は肉食動物です。それゆえに人間や犬と異なる腸内細菌を保有しています。猫本来の腸内環境が崩れた時、それは疾患リスクの増加を意味します。(逸脱が不具合を招くという原則は猫だけに限らない)

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猫に多く見られるリスク要因

連鎖球菌など、腸内細菌の世界

化学物質の影響がある?

猫で頻繁に見られる

犬ではあまり見られず、猫でばかり検出される細菌グループがいくつか存在します(※)。そうした中で、「ざっくり言えば化学物質との関連が疑わしい細菌たち」がちらほら見られます。(※ただし全ての猫というわけではない)

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室内に由来するのか?

犬では少ないことを考えると、「ずっと室内にいる」事が影響している可能性もあります。 例えば、床洗剤や芳香剤、建材に含まれる成分などの影響が考えられますが、昨今の潔癖社会を考えると前者が濃厚に思えます。(一部の洗剤と腸内細菌の変化の関連を報告する研究はいくつか存在します)

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多頭飼いで共有しやすい

共有する猫たち

猫は、犬と比べると他の個体の影響を受けやすいようです。多頭飼いの場合、複数個体で同じような細菌グループを同じように保有する傾向があります。よって、歯周病菌や感染症関連の細菌たちも共有される事例がしばしば見られます。

犬であれば親子や兄弟/姉妹で見られるような類似性が、猫の場合は別個体からも見られやすく、猫の特徴の1つと言えます。(※親子ほど似るわけではないが、高い類似性を示す)

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孤立する猫

多頭飼いの猫たちの細菌共有は、飲み水やグルーミングを経由して進むのだと考えられますが、そんな中で、他の猫の影響をほぼ受けない猫もいます。これは、他の個体から孤立している可能性を示唆するもので、何となく寂しい気持ちになります。(そういう猫、いますよね)

一方で、見方を変えればその1頭だけが感染症リスクなどから隔離されているという事でもあり、素晴らしい生存戦略と捉えることができます。(種全体にとっても有益)

犬には見られないこうした特徴、いかにも猫らしいと思いませんか?

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