冬虫夏草は本当に効くのか?

冬虫夏草は本当に効くのか?

(最終更新日: )

 中国で伝統の秘薬として知られる冬虫夏草。近年では犬用の製品もで始めるなど注目が集まっています。一方で癌に効くといったいかがわし噂もあったりなかったり..。

謎多き冬虫夏草、ここでは代表的な「サナギタケ」を中心に記載します。

冬虫夏草はキノコの一種

癌に効くという説の真相

冬虫夏草はキノコの一種です。中国や東南アジアの一部、そして日本では時に黄金並みの高値で取引されています。

結論から書くと、「サナギタケ」ががん細胞を抑制した、と報告する論文は複数存在します(含有されるコルジセピンが有効成分)。ただし、安易に盲信して飛びつくのは正解ではありません。

関連記事: 珍重される漢方薬,犬と猫と冬虫夏草

抑制は完治ではない

「抑制」というのは、増殖を抑えるという意味です。退治するとか、消滅させるという意味ではありません。癌細胞であれば、増殖スピードがやや抑えられた、といった具合です。

冬虫夏草によって、例えばがん細胞の増殖率が10%抑制できたのであれば、研究としては大きな成果です。しかしながら研究の大半はin vitro(試験管の中/培養環境)での話であり、また一般人が想像/切望する「効果」とは大きな乖離があるという点は知っておく必要がありそうです。

つまり過剰な期待は禁物です。

冬虫夏草には別の働きもある

腎臓をはじめ様々な領域への効能

「サナギタケ」には、がん細胞の抑制以外にも炎症抑制や免疫の活性、抗ウイルス活性、そして腎臓疾患の軽減などが報告されています。

上海中医薬大学のマウスの研究(2023年)では、「サナギタケ」によって慢性腎臓病の酸化ストレスと炎症が減少したと報告されています。「サナギタケ」以外の冬虫夏草でもこれと類似した報告が複数あります。

一方、タイのパヤオ大学医学部では、男女計20人での研究も行われ(2024年)、免疫強化や炎症抑制が報告されています。(ナチュラルキラー細胞の増加や炎症性サイトカインの減少など)

※その他の研究報告については後述

関連記事: 特許成分配合,冬虫夏草と乳酸菌

冬虫夏草(サナギタケ)に関する研究論文

ここでは、サナギタケおよび、その含有成分であるコルジセピンについて言及した学術論文とハイライトをざっとご紹介します。(中国での研究が多いのは、標準治療の一部に冬虫夏草が組み込まれているという背景が影響していると考えられます)

腎臓関連の研究報告

腎臓数値の改善

(様々な培地での培養を検証した研究において)慢性腎臓病に対するサナギタケ菌糸体の各培地は、BUN、血清クレアチニン、体重、総タンパク質、尿酸に特異的な効果を示した。

伊修大学など(台湾 2022)

慢性腎臓病の進行の予防

冬虫夏草(サナギタケ)は、コルジセピンを介してTLR4/NF-κB脂質および酸化還元シグナル伝達経路に影響を与えることで、慢性腎臓病の進行を予防した。

大慶油田総合病院腎臓内科(中国 2020)

腎組織の損傷の軽減

コルジセピンは腎尿細管上皮細胞におけるp38/JNKシグナル伝達経路を阻害することで腎IRI(腎虚血再灌流損傷)を著しく軽減し、炎症、細胞アポトーシス、フェロプトーシスの抑制をもたらした。

武漢大学附属人民病院臓器移植科(中国 2019)

肺に関連する研究報告

肺損傷の改善など

コルジゼピン投与が肺損傷を改善し、炎症因子と酸化ストレスレベルを低下させ、マクロファージ活性化と好中球動員を減少させることを示した。コルジセピンが腸内微生物叢の豊かさと多様性を有意に増加させた。コルジセピンがプリン代謝、ヌクレオチド代謝、胆汁酸代謝を介して肺損傷を改善する可能性が示された。

甘粛省伝統中獣医療技術革新センター(中国 2025)

肺の炎症からの保護

冬虫夏草発酵粉末はシリカ誘発性肺炎症および線維症を軽減し得る。その保護効果は、Th1およびTh17免疫応答の低減ならびにTh2応答の増強抑制によって達成される可能性がある。

山東中医薬大学(中国 2023)

肺線維症と酸化ストレス軽減

冬虫夏草治療は(人為的に作成した)肺線維症マウスにおいて、肺炎症とコラーゲン沈着を効果的に軽減した。プロテオミクス解析により、冬虫夏草によるミトコンドリアの酸化ストレス軽減が、治療として機能する可能性が示された。

中国中医科学院薬用植物研究所(2024 中国)

長寿に関連する研究報告

線虫での長寿研究

コルジセピンが抗酸化システムの改善と脂肪酸代謝関連遺伝子の調節によりリノール酸・オレイン酸の蓄積を抑制することで、線虫に抗加齢効果を発揮することを実証した。したがってコルジセピンは加齢及び加齢関連疾患に対する有望な薬剤となり得る。

南京理工大学薬学部(2025 中国)

炎症や免疫に関連する研究報告

ラットでの抗炎症

サナギタケは痛風性関節炎ラットの歩行スコアと関節腫脹を著しく改善し、尿酸ナトリウム誘発性炎症細胞浸潤を減少させた。炎症促進因子のレベルを低下させ、抗炎症因子を増加させることで、炎症反応を抑制した。

食用キノコ技術有限公司る(2022 中国)

人間での免疫に関連する研究

冬虫夏草のサナギタケは、男性群ではFNK細胞活性が顕著に増加した。女性ではNK活性がベースラインから有意に増加した。..肝臓、腎臓、血液成分への毒性を伴わない免疫増強サプリメントとして開発の可能性を有している。

パヤオ大学医学部(タイ 2024 ※上述)

鬱や"てんかん"についての研究報告

サナギタケと鬱

サナギタケのの水抽出物が、予測不能な慢性軽度ストレス誘導動物モデルにおいて脳内のシグナル伝達経路を調節することによ抗うつ薬と同様の効果を示す。

国立台湾大学食品科学技術研究所(台湾 2021)

その他の研究報告

詳細は割愛しますが、サナギタケおよびコルジセピンにおいて、肥満や抗ウイルス、抗アルツハイマー、腸粘膜保護、などの研究報告があります。

特にアルツハイマーは興味深い領域で、認知能力の回復に加え、脳、肝臓、腎臓における一酸化窒素産生と脂質過酸化を抑制したと報告されています。(釜山国立大学 2018)

冬虫夏草の注意事項

現実としては負担軽減!?

冬虫夏草の様々な効果を報告する研究は多数存在しますが、病気が治ったと報告しているわけではありません。

あくまで「効果を確認した」というものであり、実用面においては疾患などの「負担軽減」の役割を果たすと考えるのが現実的ではないでしょうか?

「癌が消えた」などとうたっている広告は100%偽物と見て良いでしょう。(※敏感な領域で派手な広告を打つ事業者がまっとうな品を扱う事はありません。そもそも薬機法違反&景品表示法違反)

偽物たちが大半を占める

冬虫夏草が効くか、効かないか、という以前の問題として、そもそも大半がニセモノという現実があります。

国内の研究機関が、流通する10種類前後の冬虫夏草を解析したところ、ほとんどが有効成分がとても低く、中には未検出というものも2,3ありました。(その中には1000万円近くする品も..)

過剰に期待してしまうと、そこに付け込む輩が必ず登場します。

疾患は治すのではなく、未然に防ぐのは最も有効な対策と言えるのではないでしょうか。

ブログに戻る