全身で見られる常在菌の1グループである「ストレプトコッカス属」。一般的には「レンサ球菌」と呼ばれています。多くの感染症や不具合に関与する「レンサ球菌」について、犬と猫の腸内細菌の視点も踏まえて記載します。
不具合のある個体で頻繁に検出される
消化器トラブルや皮膚トラブル etc..
下痢や軟便、慢性的なアレルギーや耳鼻口腔トラブル、涙やけなど、不具合のある個体の腸内から頻繁に検出される細菌グループの1つが「レンサ球菌」です。
「レンサ球菌」というのは「ストレプトコッカス属」というグループの総称です。このグループの中では、化膿レンサ球菌として知られる「S.ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)」や、肺炎球菌として知られる「S.ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)」が有名ですが、他にも農用や感染症に関与する細菌たちが多数分類されています。
一方で、ごく一部ですが、「サーモフィルス菌(Streptococcus thermophilus)」のように有益な乳酸菌も含まれています。
喉粘膜や耳鼻目、また傷口の腫れなどにも関与することが多く、その生存権は表皮から腸内まで多岐にわたります。ある意味体内で最も普遍的な存在の1つと言えるかもしれません。
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口腔内にも存在する
「レンサ球菌」は口腔内にも多く存在しています。代表的なのは虫歯菌の「S.ミュータンス」ですが、それ以外にも知名度の非常に低い「レンサ球菌」グループの細菌が、たいてい20種前後は検出されます。
こう聞くととんでもないグループのように聞こえますが、本来はどこにでもいる常在菌です。普段はおとなしい一方で、体調の悪化などに乗じて耳鼻咽頭などの感染症の原因として暴れ始めます。
そしてそれは腸内でも例外ではありません。
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腸内から検出されるレンサ球菌
腸内トラブル、そして皮膚トラブル
消化器トラブルや皮膚トラブルなど、不具合のある個体の腸内で「レンサ球菌」が増殖している例は頻繁にあります。例えばIBD(炎症性腸疾患)の1つのパターンとして、「レンサ球菌」が極端に増加している事例はしばしば見られます。
不具合に至る一番最初のきっかけは個体ごとに異なると考えるのが自然ですが、何らかの事情で「レンサ球菌」の勢力が増加し、結果として腸内で炎症が進みます。
腸内の炎症であっても皮膚の免疫応答に影響が出ることはいくつかの文献でも報告されており、結果として皮膚の痒みや腫れとして表面化する場合があります。そして、これと類似のメカニズムはアトピー性皮膚炎にも関連している可能性があります。
そして再び口腔内に?
腸内の炎症は表皮のみならず、口腔免疫や周辺粘膜にも影響を与え、結果として口腔トラブルに至る場合があります。
口腔内の衛生状態や口腔細菌組成は、腸内細菌にも影響を与えると考えられますが、一方で腸内の良し悪しも口腔内に影響を与えるのであれば、もはやどちらが先でどちらが従属なのかは分かりません。
おそらくはそれが実情で、双方が影響し合い、上昇/下降のループを形成しているのではないでしょうか。
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レンサ球菌は減らせるか?
一般的なプロバイオティクスが有効
一部の重篤な疾患を除き、「レンサ球菌」は一般的な整腸である程度コントロール可能です。
オーソドックスな方法は腸内の「乳酸菌群」の育成で、手段としては乳酸菌製品などの「プロバイオティクス」と、それらのエサとなる「プレバイオティクス」の併用です。
乳酸菌というのは乳酸を生み出す細菌の総称ですが、大半はラクトバチルス目に分類されており、「レンサ球菌」とは近縁種にあたります。これは競合関係である事も意味します。
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宿主がつよくあるべし
加齢や疾患、ストレスや食のトラブルなど、宿主が弱る事で「レンサ球菌」は勢力を増します。
Foremaラボでの解析案件においては、死ぬ直前の固体の腸内で「レンサ球菌」が大幅に増加していたという実例もあります。(※死ぬ直前のデータはいくつかありますが、その中のあくまで1つの例です)
であるならば、宿主が強くあることが「レンサ球菌」抑制の最有力手段と言えるかもしれません。
健康な時期からプロバイオティクス/プレバイオティクスを意識した食事/フードを心がけることで、リスクは大きく減らせるのではないでしょうか。
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