お腹の調子が悪いと、肌の調子も良くない..。多くの人が経験則で知っていることだと思います。当然ながらここにも腸内細菌の関与があり、数多くの論文が存在しています。そんな中から、ここでは大腸炎と皮膚炎(好中球性の皮膚疾患)に関する2022年の論文(※)をご紹介します。
大腸炎が皮膚の常在菌に影響
この論文で報告された研究は、カリフォルニア大学で行われたもの。マウスの大腸炎が、免疫系や腸内細菌/皮膚の細菌にどういう影響を与えるかが調べられました。
すごく省略して記載すると、下記の事が分かったそうです。
- 大腸炎によって皮膚の好中球が増加する
- 大腸炎によって皮膚常在菌への反応が変わってしまう
この流れによって、通常は無害である「表皮ブドウ球菌」に対して免疫が反応し、炎症を引き起こす事が分かりました。
この過程の中で、異物を許容する「T-reg細胞」が減少しており、その変化の鍵を握るのが「IL-1」と呼ばれる炎症性サイトカインであったとコメントされています。
つまり、腸内がおかしいと、皮膚もおかしくなる、という事です。
※ Intestinal inflammation alters the antigen-specific immune response to a skin commensal https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9248974/
酒造りの乳酸菌とアトピー性皮膚炎
皮膚炎の流れとして、日本酒の酒母製造に活躍する「ラチラクトバチルス サケイ(
Lactobacillus sakei)」についてご紹介します。
「ラチラクトバチルス サケイ」は、日本酒製造の過程で作られる「酒母」を乳酸菌発酵させるための重要な乳酸菌として知られています。語源はもちろん酒(サケ)です。
アトピー性皮膚炎の犬を対象とした研究では、この細菌について「2ヶ月間の投与によって、投与されたすべての犬で重症度が低下した」との報告があります。
これを聞くと、どうしても「ラチラクトバチルス サケイ」に注目してしまいますが、似たような報告は他の乳酸菌でも存在しており、また一部のオリゴ糖など「プレバイオティクス」でも類似の報告があります。
よって、本質は「整腸」にあると理解する方が妥当かもしれません。
皮膚に限らず、多くの健康トラブルはあくまで「結果」であり、「根本」の部分は別のところにある事が少なくありません。一歩引いて全体を俯瞰する事で、大切な何かが見えてくるのではないでしょうか。