小型犬を中心に、「分離不安気味」という個体は少なくありません。一体何が原因なのでしょうか?
分離不安と腸内細菌
全てではありませんが、分離不安や行動面に大きな特徴がある個体の多くで、自閉症に関連する腸内細菌が多く検出されています。
自閉症と腸内細菌の関係を指摘する説は80年代末頃に登場しました。その時は
「特定の抗生物質の使用と退行型自閉症の発症に因果関係がありそうだ」
という統計的な状況証拠を元に論文が発表されました。
時は流れ2012年。
アメリカの国家プロジェクトとして実施された「ヒト マイクロバイオーム計画」の途中報告として発表された論文の中に「自閉症と腸内細菌」の関連を立証したものがありました。
その研究では、自閉症マウスの腸内細菌を健常マウスに移植すると、自閉症マウスと同様の行動を取り始める(そして逆もあり)という事が確かめられました。
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自閉症に関連する細菌たち
今では、自閉症に関連するとされる細菌は複数種報告されています。
薬剤耐性が問題になる「クロストリジウム属」の一部や、プロピオン酸を大量に産生する一部の「フォカエイコラ属」、硫化水素を生み出す「デスルフォビブリオ属」や、IBDにも関わる「サテレラ属」など。
これらは増えすぎることでお腹の不具合を引き起こします。(内向的な人が多く保有する傾向もあります)
人間の自閉症児に慢性の胃腸トラブルを抱えている子が多いのは、腸内細菌の不具合に由来する可能性があります。
小型犬でも頻繁に見られる
自閉症に関連する上述の細菌たちは、冒頭に触れたように、分離不安の小型犬でも頻繁に見られます。
また、異様に人見知りをする、特定の何かに過剰に反応する、特定の音にすごく怒る、家ではずっと寝ているといった個体でも、同様の細菌が増えている強い傾向があります。
そして多くの場合、お腹の不具合や(腸内に由来する)皮膚トラブルを抱えています。
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なぜそうなってしまうのか?
自閉症関連の細菌が増えてしまう理由は、(親から引き継いだものも含む)抗生物質による副作用の他に、一部の化学物質も増悪要因として関係しているかもしれません。
(分離不安を含め)不具合のある個体の腸内では、しばしば化学物質を分解する細菌たちが検出されます。それらは腸内においては場違いな存在です。
そうなる可能性としては、産廃処理場や工場が近くにある、残留農薬の多い環境/散歩道、床洗剤などに問題がある、etc.. といった要因もゼロではないのかもしれません。
分離不安は治せるか?
人間の治療においても、腸内細菌のケアや、腸内細菌の移植によって自閉症の症状が改善したという報告が複数存在します。
その流れを汲むならば、ペットの分離不安も腸内環境の改善によって(特に若いほど)回復が見込めると考える事ができるはずです。