自閉症と腸内細菌の話

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自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)は、社会的コミュニケーションの特性や感覚過敏、反復行動などを特徴とする神経発達特性です。

2010年以降、腸内細菌研究が飛躍的に進む中で、腸内細菌がASDに深く関わっていることがわかってきました。ここでは世にある様々な文献の他、Forema自社ラボにおける腸内細菌研究の結果も踏まえ、自閉症と腸内細菌の関係、そして将来の改善の展望も踏まえて記述します。

腸と脳は繋がっている~腸脳相関

腸と脳は、迷走神経、免疫系、内分泌系、そして腸内細菌が産生する代謝物を介して双方向に情報をやり取りしていることが分かっています。これを腸脳相関(もしくは脳腸相関)といいます。

腸内細菌の活動によって短鎖脂肪酸(酪酸・酢酸・プロピオン酸など)、神経伝達物質様物質、炎症性サイトカインなどが産生され、これらが血流や迷走神経を通じて脳に様々な作用を及ぼします。

神経ネットワークが形成される幼少期に、腸内細菌がどのように作用するかが神経系の発達に大きな影響を及ぼしている可能性があります。

自閉症と腸内細菌叢の特徴

多くの研究で、ASDでは腸内細菌の多様性が低下していることが示されています。多様性の低下とは、検出される細菌の種類が少なくなっている他、一部の細菌グループが突出して増加しているなど、偏ったバランスの状況を指します。(通常はシャノン指数などで評価)

また、ASDでは便秘、下痢、腹部膨満感などの消化器症状を伴う例が多く、腸内環境の問題が顕在化していることは経験則としてに古くから知られています。

腸内細菌が行動に影響するメカニズム仮説

腸内細菌とASDを結びつける要因は複数存在します。例えば,

  • 腸内細菌由来の代謝物が血流ニノって神経機能に影響 (炎症性サイトカインは血液脳関門(BBB)を突破する)
  • 腸管バリア機能の低下(いわゆるリーキーガット)による慢性的な炎症
  • 神経系の発育段階における何らかの異変(腸内細菌構成の異変がそのまま神経ネットワークの発達に影響する可能性)

などが挙げられます。要因が複数存在するのであれば、その結果も複数存在するはずで、自閉症スペクトラムという名称(総称)からもわかるように、状態は1つではありません。

突き詰めれば、私たちは全く異なる疾患を、便宜上「自閉症」とまとめているだけと考えることもできます。

自閉症に関与する細菌たち

ASD患者の腸内の異変のパターンは複数存在しますが、主要なものとして、「シュードモナドータ門(旧プロテオバクテリア門)」と「クロストリジウム属」が挙げられます。

シュードモナドータ門

「シュードモナドータ門」というのは大腸菌やサルモネラ菌などが分類されるグループですが、実際には非常に多岐にわたる一大勢力です。腸内の常在菌でもあるため、存在自体は全く問題ありませんが、ASD患者の腸内で過剰に増えている事例が多くみられます。同時に、炎症性腸疾患(IBD)やアレルギー疾患、うつ病、そして大腸がんなどの悪性腫瘍でも類似のパターンが見られるという点は重要です。これは様々な異なる疾患が、根の部分ではかなり近いところに位置している可能性を示唆しています。

クロストリジウム属

「クロストリジウム属」はウェルシュ菌や破傷風菌、ボツリヌス菌など、不穏なメンバーを多く含むグループです。このグループ及び近縁種(パエニクロストリジウム属やクロストリディオイデス属など)は様々な感染症や尿毒素の産生にも関与し、消化器トラブルや皮膚トラブルに関与する事例が多くあります。そして、ASD患者の中にも「クロストリジウム属」増加のパターンが見られます。

80年代には破傷風菌が自閉症の原因ではないかという学説もありましたが、今世紀に入ってからはその近縁種である「C. bolteae」が自閉症との関連について報告されています。

関連記事:自閉症とデスルフォフォビブリオ属

自閉症の回復,軽減は可能か?

プロバイオティクスや食事介入の可能性

腸内細菌との関連が多数報告される中で、プロバイオティクスや食事療法への関心も高まっています。一部の小規模研究では、特定の乳酸菌やビフィズス菌の摂取によって消化器症状や行動指標の一部が改善したとする報告もあります。

一方で、研究の実施人数が少ない、評価の指標が統一されていないなどの課題も多く、現時点で一般化が難しい部分でもあります。が、先述のようにそもそも自閉症自体が総称であり、別々の疾患である可能性も考えられることから、評価指標の統一、プロセスの一般化という方向そのものに無理があるかもしれません。

完治と軽減の違い

「腸内細菌を整えれば自閉症が治る」という表現をしてしまうと、おそらくは道間違いを起こします。繰り返しになりますが、総称であるASDは、おそらくは別々の疾患の集まりであり、そこに遺伝的要因も加わってくることから、回復や軽減にも様々なパターンが存在すると考えられるためです。また、幼少期と成人後だと、状況は全く異なるでしょう。

その上で、腸内細菌のケアには、症状の軽減や、若年であれば回復への足がかりが含まれているのは間違いないように思えます。

Foremaで蓄積している腸内細菌データの多くは犬や猫のものですが、特に小型犬において分離不安や自閉症様行動の事例は多く、ほぼ例外なく腸内細菌の異変を抱えています。そして異変の部分を軽減できた個体はある程度の回復を見せていることが多く、人間においても同様のプロセスは再現できる可能性があります。(※犬の場合、早くても2~3歳での腸内細菌検査となり、これは人間に換算すると20代~30歳前後となります。早期の自閉症ケア、という文脈で見ると遅すぎる着手と言えます。)

現時点ではまだまだ実績を積み上げている段階ですが、人間の腸内細菌データにおいても様々なものが見えてきているため、随時情報をアップデートしていきます。

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