当たり前のことですが、口腔と腸内は繋がっています。
従来、口腔細菌は胃酸や胆汁で死滅するので腸内には到達しないと考えられていました。
ところが近年の解析技術の向上により、腸内からも口腔細菌が多く検出される事がわかってきました。
とはいえ、腸内から口腔細菌が検出されると何が不都合なのでしょうか?
歯周病菌がIBDに関与する
原因不明の難病であるIBD(炎症性腸疾患)の発症に、歯周病菌が関与(※)しているという人間での報告が複数存在します。
事実、消化器トラブルを抱える犬や猫の腸内から歯周病菌が多く検出される事例は、Foremaの解析現場でもしばしば見られます。
IBDは長期化する事でそのまま悪性腫瘍に移行しやすく、歯周病→IBD→大腸がん という不穏な流れについて、人間も、そしてペットに対してもより注意を払う必要があるのでしょう。
※ ナイセリア科(髄膜炎菌のグループ), パスツレラ科など
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歯周病菌が大腸癌を引き起こす
いくつかの歯周病菌は大腸癌の発癌と進行への関与が報告されています。
中でもF. nucleatumやA. arvulum,A. odontolyticusといった細菌たちは、Stage 0 のごく初期段階の癌患者で検出が増加しており、発癌に関与する重要な存在と考えられています。
これらは、上で触れたIBDに関与するグループとはまた別の存在であり、複数の経路から複数のグループが大腸がんリスクに関与している様子が伺えます。
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口臭と硫化水素
余談ながら、大腸癌に関与する細菌の何種類かは、細胞毒性のある硫化水素を生み出します。
硫化水素は発癌性があると同時に、口臭の原因にもなります。
「癌患者の口臭がひどい」という現実を前に、私たちは「体の毒素が口臭として表面化しているのだろう」と考えてしまいがちです。
が、現実としては口臭(歯周病菌)が先で、結果として発癌、というパターンもあるのかもしれません。
口腔という身近な生態系は、宿主の行く末に驚くほど深く関与しています。
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