ウサギの腸内細菌/腸内フローラの深掘り

ウサギの腸内細菌/腸内フローラの深掘り

犬や猫に比べて目立たない一方で、ペットとして国内で深く愛されているのがウサギ。近年、ウサギの未病対策や長寿のヒントとして腸内細菌のケアに注目が集まっています。一方で、ウサギの腸内細菌はあまり研究が進んでいません。ここではForema ラボでの解析から見えてきた、ウサギの腸内細菌/腸内フローラについて深掘りします。

ウサギの腸内細菌の概要

ウサギの腸内細菌は研究が進んでいない

ウサギの腸内細菌は研究が少ない

海外のものも含め、ウサギの腸内細菌/腸内フローラについての研究は限られています。特に愛玩動物としてのウサギにフォーカスした論文はとても少なく、ウサギの健康長寿を実現したい飼い主さんにとっては情報が少ない状況です。(家畜としての文献はあり)

犬や猫はペットとして研究が進んでいるのに対し、牛や馬、豚などは家畜として研究が進んでいます。マウスやラットは実験動物として研究が進んでおり、これらはそれぞれ多くの文献が存在しています。

ウサギの場合はこれらのどこにも属さず、腸内細菌の研究は遅れているのが実情です。

ウサギの腸内は草食動物

ウサギの腸内細菌は当然ながら、他の草食動物と比較的同じような組成をしています。また、ベジタリアンの人間とも共通項が多く、私たちにとっても健康のヒントとなる可能性があります。

逆に言えば、野菜主体で健康長寿を実現している人間の腸内細菌が、病弱なウサギにとっての健康長寿のヒントとなる可能性もあります。

主要なのはバシロータ(旧称:ファーミキューテス)門

ウサギの腸内細菌の主要な部分を占めているのは「バシロータ門」と呼ばれるグループの細菌です。

「バシロータ門」というのは、「ウェルシュ菌」や「ボツリヌス菌」といった病原性の高い細菌が含まれる一方で、「乳酸菌」や一部の「酪酸産生菌」など有益な細菌たちもここに分類される、とても幅の広い細菌グループです。

「バシロータ門」は人間の腸内においても主要な位置を占めますが、健康な人と不健康な人とでは「バシロータ門」の中のバランスが大きく異なっています。ウサギにおいても同様で、「バシロータ門がどうなっているか?」が健康長寿を左右していると考える事ができます。

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ウサギの腸内にはどんな細菌がいる?

兎の腸内細菌はどうなっている?

ウサギの腸内に生息する細菌たちについてもう少し深掘りしてみます。

バシロータ門(旧称:ファーミキューテス門)

クロストリジウム目

動物病院で「クロストリジウム」という細菌の名前は聞いた事があるかもしれません。病院で問題になるのは「ウェルシュ菌」や「ディフィシル菌」「ボツリヌス菌」などですが、このグループは大変幅広く、例えばフラボノイドを分解する「フラボニフラクター属」(悪性腫瘍やIBDに関連の可能性)や破傷風菌として知られる「C. テタニ」といった物騒なメンバーも存在します。(フラボニフラクター属や破傷風菌は健康なウサギが普通に保有する常在菌でもあり、このあたりは人間とは事情が異なっています)

一方で、重要な酪酸産生菌(らくさんきん)である「フィーカリバクテリム属」や「ブチリビブリオ属」、プロピオン酸を産生する「アナエロティグナム属」など、健康維持に貢献する細菌たちも多く含まれます。

健康な個体ほど、こうした細菌たちを偏らず幅広く保有しているのが特徴です。

関連記事:そこにある驚異!?ウェルシュ菌の話

バチルス目

このグループは土や草などに関連する傾向があります。例えば枯れ草を好む「納豆菌」や、土に関連し食中毒の原因にもなる「セレウス菌」などはこのグループの代表的な存在です。「ブドウ球菌」として知られる「スタフィロコッカス属」もこのグループに分類されます。

「セレウス菌」や「納豆菌」自体はウサギの腸内からはあまり検出されませんが、これらと同属である「バチルス属」全般や近縁の「キルピディア属」など、幅広い細菌たちが検出されます。これらは、土に由来するためウサギらしい細菌と言えます。(人間では少ない)

こうした細菌たちは室内しか知らない飼いウサギでも一定の保有があるため、生牧草などから摂取している可能性がある他、母体を通じて遠い祖先から脈々と受け継いでいると考えることもできます。ウサギ本来の常在菌なのであれば、健康長寿に何らかの形で寄与している可能性はあります。

関連記事:動物にも関連する薬剤耐性菌の話

ラクトバチルス目

主要な乳酸菌たちは「ラクトバチルス目」に分類されています。どんな乳酸菌を保有するかは個体差が大きく、それは普段食べているフードや、野生種であればその周辺環境、食性などに左右されると考えられます。

「ラクトバチルス目」の中には、感染症に関連する「レンサ球菌」グループも含まれており、健康個体であっても一定量の検出があります。これらの増減は健康のバロメーターのような側面があり、飼い主さんにとっても重要な指標となり得ます。

関連記事:犬と猫の乳酸菌の話

バクテロイドータ門(旧称:バクテロイデス門)

このグループは人間の腸内で主要な位置を占めますが、ウサギの腸内でも2番目もしくは3番目の勢力であることが一般的です。

バクテロイデス目

人間の腸内では重要な役割を果たすグループですが、ウサギの腸内ではそこまで主だった存在ではありません。これは人間に比べて、より繊維質の多いもの(※)を食べている事が影響している可能性があります。(※人間が食べる野菜、穀物類よりも、さらに繊維質の高いもの。牧草など人間に消化できないものが影響している可能性)

サイトファーガ目

多糖類やセルロースを分解するグループで、人間の場合はほとんど保有しませんが、ウサギは比較的多く保有します。セルロースというのは茎や藁などに含まれる繊維質のことで、まさにウサギらしい細菌と言えます。

一方で、半野生のウサギよりも飼いウサギの方が多く保有する傾向があり、これは通年でチモシーなどの牧草をふんだんに与えられている事が影響している可能性があります。

フラボバクテリア目

淡水や海水に広く存在する細菌グループで、室内の飼育ウサギからはあまり検出されない一方、屋外のウサギからは一定量の検出があります。よって飲み水が影響していると考えるのが自然です。こうした細菌たちは俗にいう「雑菌」扱いですが、こうした雑多な細菌たちの存在が腸内の多様性を高めているという側面は大いにあります。

関連記事:ウサギの腸内細菌 プロテオバクテリアを減らすには?

ウェルコミクロビオータ門(旧称:ウェルコミクロビウム門)

アッカーマンシア属

人間においては痩せ菌とか、次世代のプロバイオティクスといった表現で善玉菌のような扱いをされる事が多いグループです。

一般的には食物繊維や海藻、魚などで増えるとされていますが、人間の場合は個人差が非常に大きい存在でもあります。(一部で重篤な疾患にも関与)

一方でウサギの場合は屋外の個体も飼育個体も同様に多く保有しており、種全体で共通する常在菌として腸内で一定の勢力を維持しているようです。

「アッカーマンシア属」はウサギだけでなく、野生の鹿やヌートリアなどからも検出があり、草食という行動様式が大きく影響している様子が伺えます。人間の研究においては長寿との関連も報告されており、ウサギにおいても健全生との相関を報告する文献があります。

尚、人間の腸内で検出される「アッカーマンシア属」は「A. ムシニフィラ」という細菌1種である事が大半ですが、ウサギの場合は「A. ムシニフィラ」以外に「A. グリカニフィラ」という近縁種がまとまった量で検出されるという特徴があります。

関連記事:偉大な味方か、それとも?? アッカーマンシア属の話

ウサギの寿命は伸ばせるか?

ウサギの寿命は伸ばせるか

ウサギの腸内細菌は安定している

ペット犬に比べると、ウサギの腸内細菌はかなり安定しています。高齢の個体や、疾患によって亡くなってしまう前の個体の腸内細菌においても、健常個体との共通項が比較的多く、犬や人間のようにバランスが崩壊して疾患に至っているといった事例はそこまで多くありません。(抗生物質投与の多い個体を除く)

この状況でさらに寿命を伸ばす(=健康を維持し疾患を減らす)場合、酪酸産生菌がカギとなるかもしれません。

酪酸産生菌が長寿を支援?

主要な酪酸産生菌は食物繊維類の摂取で増加します。人間においては長寿との関連が報告されている一方で、飼育ウサギでは保有が多くありません。これは草食動物にしては珍しいことでもあります。であれば、これらを育成していくことで飼育ウサギの健康長寿を促進し、本来持っている寿命を目一杯生かしてあげる事ができるかもしれません。

スペインのバレンシア工科大学の研究では、ウサギの長寿グループでは「ルミノコッカス科」や「ラクノスピラ科」といった細菌グループの検出が多い事が報告されています。これらのグループには複数の酪酸産生菌らが含まれており、長寿に寄与している可能性を示唆しています。

酪酸産生菌の育成のヒントとしては、ウサギ本来の食の範囲でなるべく幅広い食材を与えてあげる事、食材は良質かつ新鮮である事、ストレスを回避する事、などが挙げられます。

関連記事:抗酸化物質 グルタチオンについて

検体のウサギについて

兎の島、大久野島

どんな宿主の検体を解析しているのか?

Forema でのウサギ研究においては、飼育ウサギとしてホーランドロップとネザーランドドワーフ、半野生ウサギとしてニホンノウサギ(野生→事故で保護)、屋外のウサギとして、ウサギの島で知られる大久野島のウサギたちの検体を多く解析しています。

大久野島のウサギについて

Forema は広島という立地から、ウサギの島として知られる大久野島へのアクセスがしやすい位置にあります。大久野島に生息するのは日本固有種のニホンノウサギではなく、元はペットに由来するアナウサギたちです。野生化してから数十年経過していることから野生ウサギと明言してもいいのですが、観光客が持ち込む餌に依存しているグループも多いため、半野生ウサギとして位置付けています。

一方で、島の中でもグループによって生息域が分かれており、観光客が来ない山の方を好む個体たちは、観光エリアの個体たちとは腸内細菌組成が異なる可能性があります。この部分の調査は現在進行中なのでまだ記載できませんが、追って詳細をお伝えできればと思います。

関連記事:柿と乳酸菌,そして腸内細菌

野生のニホンノウサギについて

Foremaは山間部という立地から、周辺に野生のニホンノウサギが生息しています。一方で、新鮮なフンの確保は大変難しく、結果として野生のニホンノウサギの腸内細菌はまだ確保ができていません。

確保が難しい理由として、山間部においてもニホンノウサギとの遭遇頻度は少なく、さらに茂みの中から小さなフンを見つける事ができないという実情があります。そして屋外では排泄から短時間で土壌由来の腐敗菌に汚染されてしまうため、小さなフンほどすぐに汚染が進んでしまいます。

これに対し、野生の鹿やヌートリアはウサギよりも警戒心が薄く、また行動パターンが一定しているため、かなりフンの確保がしやすい存在です。他にもツキノワグマやタヌキ、野鳥類なども(行動パターンを把握する事で)検体の確保ができており、野生由来の多くの腸内細菌データが集まっています。

これらをを解析することで里山動物における共通項を見出し、健康長寿の重要なヒントとして知見を蓄えています。

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